頑張りすぎた子は秋に体調を崩してしまう

夏休みは、どの塾でも“受験の天王山”と騒ぎ立てる。だが、かつて塾講師をしていた私は知っている。それは、塾のあおり文句にすぎないのだ。6年生の夏休みに、必要以上に難しい演習問題を解かせたり、電話帳並みの分厚いテキストでたくさん勉強した気にさせたり、一日中勉強漬けの合宿に参加させたりすることで、この夏の頑張りがすべてという雰囲気を作っているにすぎない。

確かに夏休みは、受験生にとって貴重な時間だ。でも、この夏の勉強の成果ですべてが決まるわけではない。だから、親もここで勉強に疲れさせないように気をつけてほしい。夏休みに頑張りすぎた子は、秋に体調を崩し、そのまま引きずることが多い。すると、大事な模試で結果が出せず、子供のモチベーションが下がっていく。一度下がってしまったモチベーションを上げるのは容易ではない。

実は、夏休みにこれほどまで頑張って勉強をしても、多くの子が秋の模試で成績を落とす。その理由は次回で詳しく述べるが、親はそれを想定内として捉えておいてほしい。だが、そこから正しいやり方で勉強を進めていけば、最後は伸びる。男の子の多くは年明けから本番までの1カ月でグングン伸びていく。その時期になると、さすがに小学生の子供も受験を“自分ごと”として捉えられるようになるからだ。その自ら頑張る時こそが、私は本当の「受験の天王山」だと思っている。

西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。
(構成=石渡真由美 写真=iStock.com)
関連記事
悠仁様も通った国立小学校に受かる子の親
親が熱心なほど中学受験で不合格になる訳
子供を必ず算数嫌いにする"NGな教え方"
中学受験で足を引っ張る「理系父」の口癖
やりたくない事をやり続けると病気になる