サムスン電子のメモリー在庫は積み上がっている
市場参加者の間では、需要の落ち込みを反映して通常1カ月程度といわれてきたサムスン電子のメモリー在庫が積み上がり、3カ月程度に達しているとの見方が多い。当初サムスン電子は本年半ばには半導体需要が底打ちするとの見方を示してきたが、その予想も後ずれしている。
DRAMとNAND型フラッシュメモリーに関しては、台湾企業をはじめ、米マイクロン・テクノロジー、ウエスタンデジタル、わが国の東芝メモリなど韓国の代替となる供給者もいる。中国でもDRAMの量産体制が整いつつある。先行きは不透明だが、少なくとも現時点ではわが国の対応が韓国に与えるマグニチュードと、世界経済に与える影響は分けて考えるべきだ。
わが国の輸出管理体制の見直しに加え、韓国は米中摩擦の影響にも対応しなければならない。米中摩擦は覇権国争いだ。短期間で摩擦が収束する展開は見込みにくい。すでにアップルをはじめとする各国の主要企業は、制裁関税の回避やより安い労働力を求めて、中国から他の国へ生産拠点を移している。それが世界のサプライチェーンを混乱させ、製造業の景況感が悪化している。
韓国経済にのしかかる米・中貿易摩擦
相対的に経済が良好な米国でさえ、先行きの不確実性の高まりを重視せざるを得ない状況にあり、パウエルFRB議長は利下げを検討する考えを示している。韓国にとって最大の輸出先である中国経済も厳しい。中国経済は投資に支えられた成長の限界に直面している。
債務問題が深刻化する中、米中摩擦によって悪化した企業経営者や家計のマインドはそう簡単には改善しない恐れがある。現時点で中国の景気対策が効果を現し世界経済の先行き不透明感が幾分か晴れると想定するのは難しい。
わが国の対韓輸出制度の見直しと、米中摩擦を受けたサプライチェーンの混乱などから、韓国経済の先行き不透明感は高まっている。もともと韓国経済は財閥企業の輸出競争力に支えられて成長を遂げてきた。輸出への依存度が高い分、世界経済の動向に韓国の景気は左右されやすい。