検討会の「委員」に産婦人科医は含まれていない

その一つが、厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会」だ。市販化が検討された5種類の薬剤の中に緊急避妊薬(一般名:レボノルゲストレル、商品名:ノルレボ)が含まれており、緊急避妊薬の市販化について議論された。緊急避妊薬についての議論は、2017年7月27日の第2回会議と2017年11月15日の第3回会議で行われた。検討会の委員は男性12人、女性4人。委員に産婦人科医は含まれておらず、参考人として日本産婦人科医会の常務理事や産婦人科医である国立国際医療研究センター病院の副院長が入っているだけだった。

「緊急避妊薬がOTC化(市販化)されると100%妊娠を阻止できると、一般の方が誤解されるのではないかと危惧します。(中略)何パーセントかの方々は知らない間に妊娠が継続していくとか、いわゆる子宮外妊娠に陥ったことを見逃されてしまうということを、われわれ産婦人科医は危惧しているのです。そのことまで薬剤師の方がしっかり説明できるとは思えないのです。(中略)実際に緊急避妊薬を求めて来られる方は、経口避妊薬を常用していない方です。ですから、そのようなことに全く慣れておらず、知識も経験もないので、妊娠に気付くのが遅れてしまう恐れがあり、そこが一番心配するところです。(国立国際医療研究センター病院副院長)」

「環境や使われ方」への懸念が目立つ議論

「性教育そのものがまだ日本はヨーロッパやアメリカからかなり遅れております。(中略)うちの妻は薬剤師ですが、ピルの話になると全くチンプンカンプンです。(日本産婦人科医会 常務理事)」

「女性の権利という部分をどのように国全体が考えるかということにかかってくるのではないかと思います。(中略)この国の形としてどのような女性の立ち位置があるのかということを、しっかりと協議した上で考えていかなければならない問題ではないかというのが、個人的な感想です。(中略)現時点では性急すぎるのではないかと医会全体としての考え方はそのようでございます。(日本産婦人科医会 常務理事)」

議事録にはこうした発言が残されている。これらの発言に対して、「薬そのものの安全性であるよりも、むしろ患者の理解であるとか、薬剤師の知識や理解の不足などといった、環境や使われ方への御懸念が多かったこと」が気になるという、検討会の委員からの発言があったことも追記しておく。

検討会の第2回会議の後、厚労省によるパブリックコメントの募集が行われた。なんと市販化への賛成意見が320件も集まり、反対意見はわずか28件にとどまっていた。だが、大多数が緊急避妊薬の市販化を賛成したにもかかわらず、その声を無視するかのように市販化は見送られたままなのだ。