車いすに装着すると自動で動く新モビリティ
免許の返納を迫るならば、少なくとも通院や買い物の方法を確保してからだと思う。例えば、トヨタ自動車は6月7日の「EVの普及を目指して」という戦略発表会で、歩行速度領域をカバーするパーソナルモビリティを3機種発表した。これまでもスズキ自動車の「セニアカー」など、足腰の弱った高齢者に向けた免許証不要の電動車いすはあったが、これをより進化させたものになっている。
車種は、セグウェイに似た小型の立ち乗りモデルと、着座する3輪型スクーターの電動車いすモデルに加え、普段使っている車いすと連結できるモデルの3種である。それぞれ時速2、4、6、10キロと速度が切り替えられ、立ち乗りモデルのみ10キロまで対応できる。どのモデルにも障害物を検知して止める機能が付いている。
さらに、ユーザーの後ろを自動追従する「ポチ機能」、つまり犬の散歩のような機能が付いており、疲れるまでは徒歩で歩き、疲れたら乗って帰るという自助生活を補助する機能が搭載される。
資金面を含めた「自助生活の補助」を考える
高齢者のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)を考えた時、効率化と楽さばかりを考えるのは企画側の傲慢だ。人が最も幸せなのは、自分で自分のやりたいことができること。つまり自助生活の補助こそが本来の目的だ。
だから可能な限り自分で歩く。ボケないため、衰えないために、もっと言えば人の尊厳のためにそれは重要だ。その上で、トヨタが名付けたポチ機能の様に、人の行動に付き従い、問題のある場面で衰えた能力をバックアップできることが求められている。
まだ開発中ではあるが、これらのモデルは地域内での無人自動運転機能を装備し、よく行く場所までのルートを登録したり、夜間にトヨタディーラーまで無人走行して点検と充電のサービスを受け、戻ってくる機能などが搭載されるかもしれない。可能性で言えば走行できる範囲を制限して遠くまで行かない様にしたり、現在地を発信したり、いざとなればリモートで指示を出して自宅に連れ戻すこともできるだろう。
購入価格の問題をクリアするためにトヨタのサブスクリプション(月額課金)サービスである「KINTO(キント)」での運用まで想定されているのだ。高齢者の事故の問題を考えるというのはこういうことを言うのだと思う。