香港政府トップの「謝罪」は本心なのか

6月13日付の読売新聞の社説は「中国化への危機感が噴出した」との見出しを掲げ、まずこう書く。

「中国の意に沿わない人物が、犯罪者に仕立てられ、中国本土に移送される。そんな事態が日常化することへの危機感の表れと言えよう」

遠回しに書き上げようとする朝日社説に比べ、ストレートで分かりやすい書き出しである。

「改正案が審議されるのを前に、多くの人が議会周辺の道路を占拠した。警察との衝突で負傷者が出るなど、混乱が続く」

6月9日の抗議デモは100万人規模だった。その規模の大きさを考慮せず、香港政府は12日に逃亡犯条例の改正案の審議に入り、20日に採決する方針を示した。議会(立法会)は親中派が多数を占めるため、採決されれば、必ず可決される。デモの無視と改正案可決の背後には、強権な中国本土の思惑が存在している。

続いて16日には、200万人が参加した大規模なデモが起き、香港政府トップの林鄭月娥行政長官はこの日夜、「政府の対応が不十分だったために、香港社会に大きな矛盾と争いを生み、多くの市民に失望と悲しみを与えたことに行政長官として市民におわびする」との声明を出して謝罪した。

この謝罪が本心からのものかどうかは、いずれはっきりするだろう。

「死刑囚ドナー」になった香港人が臓器をとられる恐れ

さらに読売社説は書く。

「香港の人々が反対を強めるのは一党独裁体制の中国で、司法が政治から独立していないからだ」

司法が独立してない国家。GDPで世界2位という中国の経済発展がいかにニセモノであり、真の豊かさがないかがよく分かる。

「司法機関は共産党の指導下にある。法律が恣意的に運用され、言論弾圧などに利用される。人権問題を扱う弁護士らが大量に拘束され、勾留は長期に及んでいる」

読売社説も、朝日社説と同様に中国の体制を厳しく批判する。

中国では思想犯として拘束した人々をためらうことなく、死刑にする。そして健康な彼らの体から心臓や肝臓、腎臓といった新鮮な臓器を摘出して海外からやって来る患者に高額な費用で次々と移植している。外貨の獲得が狙いだ。いわゆる国際社会で問題にされて久しい「死刑囚ドナー(臓器提供者)」である。

最後に読売社説は「中国の習近平政権は、混乱や衝突が拡大すれば、国際社会の批判が強まり、自らの威信にも傷が付くことを認識すべきだ」と主張する。

日本の新聞が習政権に指示した形だが、読売社説でなくとも中国本土が香港の民主化にどう対応するか、目は離せない。

(写真=時事通信フォト)
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