まず、最もギャップを感じさせられたのは以下のような設問である。

「マネジメントは(注・経営層に対しては「あなたは」と質問)営業の現場を知っていますか?」

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あなたは営業の現場をよく知っていますか? マネジメントは現場を理解していると思いますか?

経営層(社長・会長および常務・専務などの役付役員)の場合は、当然ながら86.4%もの人が「YES」と答えている。これに対して「NO」は9.2%、「どちらとも言えない」は4.4%にとどまった。

同じ質問を一般の営業マンにぶつけたところ、「YES」は5.2%、「どちらとも言えない」も3.4%に過ぎず、大多数の91.4%は「NO」と答えるという正反対の結果が出た。

では、現実に経営層は営業現場を把握しているのだろうか?

公平に見れば「把握している」というのが適当だろう。具体的には社長自身が個々の営業マンと面談することもあれば、営業部長が面談してデータだけ経営層にあげているといったケースもある。いずれにしろ、経営層はさまざまなルートから営業現場の把握に努めているのだ。

むしろ問題なのは、経営層が「把握している」事実が、なぜか営業現場には伝わっていないということだろう。

一方、営業マンは、当然ながら経営層にあげるべきお客様の声や現在の課題、会社が抱える営業手法の問題点などを知悉している。ところが、それを伝えるための機会や手段がないので、せっかくの情報が生かされていないと感じている。だから9割以上がこの設問に「NO」と答えている。

「たまに思いつきで会社がアンケートを取るとかヒアリングをすることはある。しかし、その後のフィードバックがない」

私自身がさまざまな営業マンと接触して話をうかがったところでは、このような不満を漏らす人が非常に多い。営業マンは現場情報を上層部に伝えるルートが閉ざされていると感じているのだ。

経営層も営業マンも「情報を共有してみんなで効率よく営業をしよう」という同じ思いを抱いている。しかし現実には情報を共有できていない(と感じている)。いわばコミュニケーションのパイプが詰まっているのである。

その結果、現場の営業マンは「うちのトップは現場を把握していない」と思い込んでしまう。この状態を放置しておくと、やがて「現場を知らないトップに何を言ってもムダだ」という雰囲気が醸成され、問題点や改善点が見えているのに、上へ報告しない無責任体質ができあがってしまうだろう。

そうなると、さまざまなことを隠蔽する風土が生まれ、最悪の場合には、トップも気付かないうちに問題点がどんどん蓄積され、不祥事というかたちで一気に爆発するおそれがあるのだ。