「とりあえず働け」のロジックは古い
ヨーロッパやアメリカでは新卒チケットというものがないので、大学を出てから世界を旅したり、NPOなどで社会経験や実績を積んで25~28歳くらいで就職したりするパターンが一般的だ。
一方の日本では、一括採用文化の影響で自分の天才性に気づいていないのに就職してしまい、イメージとのギャップやモチベーションの維持に苦しむ人が絶えない。
ただ、こうした画一的な就職観はだいぶ変わりつつある。
私の会社で働くインターンを見ても、大学を休学して海外や企業で経験を積んだり、大学院に行ったりしながら20代後半でようやくどこかに腰を据えるというケースが目立つようになっている。
また、私の実兄が運営している日本人学生向けの海外ビジネスインターンシップ事業(武者修行プログラム)でも、在学中に海外でのビジネスを経験したいという志の高い学生が毎年1000人以上集まる。
こうした自由度の高いキャリアの作り方も、今後は普通のことになっていく。
「やりたいことがわからないならとりあえず働け」という正社員至上主義論や、「天職を探し続けても見つからない。やり続けたら天職になる」という天職昇華論は、あくまでも従来のタテ社会のロジックである。
大学を卒業するまでに「20種類の仕事」を経験した
私は大学を卒業するまでにアルバイトを含め、20種類の仕事を経験した。工場のラインにも立ったし、引越し作業を終えた足で外資系金融のきらびやかなオフィスに出勤するようなこともあった。
当時は自分の不遇を嘆いたものだが、そうやって10代のうちからいろいろなことを経験していると、自己分析が苦手な人であっても自分の向き不向きは自ずと見えてくるものだ。だから社会に出るタイミングで少なくとも自分の得意なことを活かせるだろうという確信はあった。
60億人のワンオブゼムになるか、何かの分野のオンリーワンになるか。それを社会に出る前にある程度見極めておくことが大事である。
自分の個性(天才性)はできるだけ微細なレベルで知っておく必要がある。「自分は電通に合っていそうだ」といった「企業レベル」の話でも当然ないし、「広告業に向いているかもしれない」といった「業種レベル」でもない。または「英会話が得意」と言った「スキルレベル」でもない。
天才性とはもっと微細で、深いレベルの自分の強みのことである。