「元素」をカルタ取りと模型作りで学ぶ
この日の授業のテーマは「元素」。宝槻が最初に子供たちに与えたミッションは、「カルタ取り」だった。宝槻が出すヒントから当てはまる元素を選ぶというものだ。ゲーム感覚で楽しめるとあって子供たちのテンションは最高潮に。しかし、これはあくまでウォーミングアップに過ぎず、真骨頂は盛り上がった後だった。
【宝槻】「名付けて~タララン♪ 分子を作ってみようー! イエーイ!!」
子供たちに配布されたのは穴の開いた小さなボールと棒。原子に見立てたボールを棒でつないでいき「化学式C6H6(ベンゼン)の分子構造」の模型を作り上げる。
【宝槻】「行くぞ! 5分だぞ!」
C6H6は炭素原子6つと水素原子6つが結合してできている。合計12個のボールを棒でつないだ模型を作ることで、分子構造が直感的に理解できるという。
2人の女の子が手を挙げた。答えが分かったようだ。だが駆け寄って確認した宝槻さんは「これは美しくない! もっと美しい形になる方法を探して」と一言。
不正解だった。2人はがっかりした様子だが“美しい”とは一体どういうことなのかと自ら考え始める。この“美しいかどうか”というヒントこそが、宝槻さんの真骨頂だろう。
ようやく1人が正しい形にたどりつく。
【宝槻】「これが正解! どう? 雪の結晶みたいで美しいでしょ? 美しいと思う人~!」
【生徒】「ハーイ!!」
「私たちは“星の子供”ってことなんです」
元素が作る分子構造は美しい。そのことを子供たちに体感させると、トークは一気に熱を帯びていく。
【宝槻】「皆さんが毎晩夜空で見ている無数の星々の光は、実は“元素”を作り出す時の光なんです。星たちは一秒も休むことなく星を作り出している。だからあの輝きは元素を作り出す“努力の輝き”なんです。そうやって星たちが生み出した元素が地球にやってきて、その力を借りて私たちは生きている。言うなれば、私たちは“星の子供”ってことなんです」
【子供】「すごいなー」
壮大な元素の物語を肌で感じ、子供たちの目も光り輝く。難しいテーマでも、いざない方ひとつで好奇心の種をまくことができると宝槻は言う。