心理学から考えた投影のプロセス

これを中島選手のケースに当てはめるならば、次のような投影が行われた可能性が考えられます。

【投影のメカニズム】
①「中島選手は、ステップアップせず現状維持でいようとしている」ことが、なぜかやたらと目につき、イラッとくる。

②私たち自身の無意識に、“認めたくない”“できればなかったことにしたい”となんらかのネガティブな欲求や感情がある。

③それは「私も本当はステップアップせず現状維持でいたい」という欲求だと推測される。

④しかし、それは社会的に良くないことと思われているので、“認めたくない”“できればなかったことにしたい”から、自分では気づいていない。

⑤私たちはその欲望を見たくないので、中島選手に押し付け(投影し)、中島選手を非難し自らと対比させることで、あたかも自分には「現状維持をしたい」という欲求などない、と確認し自分を守る。

心理学という眼鏡を通してみれば、このような投影が行われていた可能性がある、とわかるのです。

欲求や感情を堂々と認める

では、厄介な投影に対して、私たちはどのような対策をとることができるのでしょうか。それは、自分の中にある、認めたくない欲求や感情を認めることです。

投影が起こるのは、欲求や感情を「なかったことにする」からです。もしも、その欲求や感情を堂々と認め、そんな自分を否定せずに受け容れることができれば、そもそも投影は起きなくなるのです。

そして、この統合のプロセスを「思考」と「感情」の両面から、「今、ここ(here and now)」で体験することが重要です。

まずは思考面からのアプローチです。私たちの多くは「現状維持のままではいけない」「常にステップアップしなくてはならない」という社会通念を共有しています。

そのため、それに反する欲求、例えば「現状維持のままでいたい」「ステップアップしたくない」という欲求を持つと、それを“認めたくない”“なかったことにしたい”と無意識で考えます。