CAD/CAM 西新宿歯科クリニック●草間幸夫

詰め物なら最速7分で加工完了

虫歯を削ったその日は、歯型を取ってプラスチックの仮歯を入れる。後日、セラミックの詰め物や被せ物などの技工物を装着。これが従来の歯科治療の工程だった。しかし、最近は1日で終わる治療法が広がってきた。この短時間治療法を実現したのが、ドイツ発のセラミック医療システム「セレック」だ。

3Dカメラでスキャンしたデータを編集し、技工物を設計。切削装置も小さいため、狭い空間で作業が完結してしまう。

セレックによる治療の流れは、まず光学センサーの3Dカメラで歯型をスキャン。それをCAD/CAMで画像処理し、技工物の3Dを設計する。データは横幅70センチの小さな切削装置に送信され、セラミックのブロックから技工物を削り出していく。

「多忙なビジネスパーソンには最適です」と話すのは、西新宿歯科クリニック院長の草間幸夫氏だ。20年近く前からセレックを導入し、インターナショナルトレーナーの資格を持つ。

ブロックの削り出す部分を3D上で設定し、切削装置にデータを送信。ウェット方式では、水をかけながら技工物がみるみる加工されていく。

「画像編集は3分もかかりません。削り出しは自動で、簡単な詰め物なら最速で7分、被せ物なら12~15分で加工できます。また、セラミックのブロックには色がグラデーションのタイプもあり、歯の色に合わせてどの部分を削るか、調整可能です」

時間節約は当然ながら、接着も短時間治療の利点だ。セラミックの技工物のよさは、長期安定的に接着すること。銀歯のように時間とともに接着が悪くなり、隙間が空いてまた虫歯になるということが起きにくい。

「ところが今日歯を削って、来週、技工物をセットする場合は、仮歯をセメントでつける必要があります。すると唾液に含まれるムチンというたんぱく質がついて接着力が落ち、セラミックのよさが台なしになってしまう。その点、仮歯なしですぐにつければ、接着が万全になります」

草間氏のクリニックでは、セレックの詰め物は6万円から、被せ物は8万円からが目安だ。また、セレックは長期間かかる歯列矯正でも、威力を発揮する。ワイヤー矯正で目立ちたくない場合には、マウスピースを使った「アライン矯正」という選択肢がある。少しずつずれたマウスピースを何十段階も作り、歯を25ミクロン程度ずつ動かし、約2週間ごとに替えていく。こうした段階的なマウスピースは、石膏模型よりもデータで設計したほうが精巧にできるのだ。

今までバージョンアップを重ねてきたセレック。長年使う草間氏いわく、「どんどん使いやすくなっている」。詰め物・被せ物は即日治療が常識になる日は、遠くないかもしれない。