もう一条触れておこう。

意味は以下のとおりである。

心から出てくるつまらない考え、外から入ってくる感情は、志が確立されていないからだ。しっかりと志が立っていさえすれば、邪悪な考えなどはすべて退散してしまうものである。これは清らかな水が涌き出ると、外からの水は混入できなくなるのにたとえられる。

革命の仕上げに西郷が懸けた「命」

この条文には、明治4(1871)年に廃藩置県を断行するにあたっての、西郷の発言が記されている。南洲曰(いわ)く、「吉之助の一諾(いちだく)、死以(しもっ)て之(これ)を守る」と、他語を交えず。

吉之助とは西郷の名前である。みなさんの意向は承諾した。廃藩置県の遂行にはわが命を懸ける、と覚悟のほど、つまり「一志」を示したのである。

当時は、新政府に移行したものの、徳川時代の300諸藩主はそのまま存在していた。旧勢力の権力を奪い取るという、革命の仕上げが廃藩置県であった。しかし、それは構想した木戸と大久保だけではなしえず、西郷という原動力を借りざるをえなかったのだ。

維新の原動力となった西郷がどれほど『言志四録』を味読し、修養に資していたか。その足跡が窺えるようではないか。

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