岡本さんも「社員同士の心のつながりが生まれるような仕組みづくりを企業には考えてもらいたいですね。特に孤独になりやすい定年退職後の生き方も視野に入れた新しいコミュニティやネットワークの構築に積極的に取り組んでほしい」と要望する。
楽しみが見つかる孤独時間の活かし方
「1人でいることは好きですか?」との問いに対しては、なんと82%強が「好き・どちらかというと好き」と肯定的な回答だった)。ポジティブな孤独を楽しんでいるということだろう。ただ、その1人の時間の過ごし方を見ると、男女ともに1位が「映画やドラマを見る」で、次いで「寝る」の順だ。諸富さんは「生産的な時間の使い方をしているというより、ヒマつぶしをしている印象を受けます。非常にもったいない」と語る。
「人生をもっと楽しくする方法があります。まずは、3種類の孤独のうち、③の『実存的な深い孤独』のために1人の時間を少しでも使ってほしいです。自分を見つめるための、自分と対話する時間です。これはフォーカシングと呼ばれるもので、静かに心に感じられた実感に触れ、そこから意味を見いだす心理療法です」
具体的にはどうしたらいいのか。
「最も簡単な方法は、ただボーっとすることです。そして頭に浮かんでくることを、とりとめなくメモする。自由連想法と言いますが、考えるのではなく、どんなものでもメモしていくうちに、フッと気づくことがあります。自分はこんなことを考えていたのか、実はこういうことをしたいのかなど。場所はカフェでもバーでもどこでもいい。30分くらい、コーヒーやお酒を飲みながら、ボーっとする。これを週1回でもやると、意外と人生の転機になることがあるのです」
SNSを捨て、SNACKへ行こう
ここまで見てきたように、孤独は一概に悪いものではない。しかし、非選択的な寂しい孤独は避けたい。深刻な孤独に陥らないために、我々個人としては何をすべきか。熟年離婚の増加に見られるように、特に中高年の男性が孤独の危険にさらされていると岡本さんは注意を促す。
「日本の男性は家庭と会社以外に居場所がない人がとても多い。趣味もなく友達もいない。そしてそのままリタイアするため、妻に依存しがちです。それが離婚につながることも少なくないでしょう。ただ男性の場合、地域コミュニティでおしゃべりするだけではダメで、居場所と役割というのが重要です。達成感を欲しているからです。ですから早い段階、40代くらいから、なるべく長く仕事を続けられるような算段をつけることも1つの手です。副業であるとか、独立するとか。仕事以外にも、趣味やサークルなど何でもいいので、どんどん人とのつながりをつくっていくことが大切だと思います」