では、実際に孤独な人はどれくらいいるのか。ヒントになりそうなのが孤独の代表ともいえる独身者の推移だ。平成のうちに日本の生涯未婚率は大幅に上昇した。生涯未婚率とは50歳時点で1度も結婚歴がない人の割合。1990(平成2)年と2015(平成27)年を比べると、男性5.57%→23.37%、女性4.33%→14.06%と約3~4倍に増加している。
また、熟年離婚する人も増えている。たとえば、50歳以上の熟年離婚件数をみると、90年と17年では、男性が約1万2000件→約3万4000件、女性が約8000件→約2万3000件と、ともに3倍近い伸びを示している。
実際、岡本さんによれば、日本は世界一の孤独大国なのだ。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、友人や同僚など他人と時間を過ごすことがほとんどない人の割合は、日本は15.3%で加盟国中トップだ。
特に男性の孤独が深刻で、友人や同僚らとほとんど、またはまったく時間を過ごさない割合は16.7%と突出して高く、平均値の3倍近い。男性では日本人男性が世界一孤独ということだ。
もっともその背景として、日本には孤独をよしとする風土があることも関係しているものと思われる。「日本人はもともと孤独が好きなのです」と諸富さんは言う。岡本さんも「日本では孤独を礼賛したり美化する考えが根強く、特に男性はそうですね」と話す。
孤独だと認めない、日本のオジサン
プレジデント誌が実施した「孤独に関するアンケート」調査でも、日本人の多くが孤独を感じていることが判明した。男性の64.2%、女性の76.3%が「孤独を感じるときがある」と回答。女性が孤独を感じる割合が男性よりも10ポイント以上も高いのは意外な気がするが、諸富さんは「男性はプライドがあって孤独を認められないということは考えられますね。女性のほうが孤独にポジティブですから、素直に認められるということはあると思います」と分析する。岡本さんも「男性は自分が孤独であることを認めたくないのかもしれません。ただ、孤独を感じるかという主観的な質問ではなくて、1人で過ごす時間はどれくらいかなどの客観的な質問であれば、男性のほうが孤独状態にある人が多いと思います」と解説する。
孤独を感じたときに、周囲に助けを求めたり相談できる相手がいることは、事態を深刻化させないために重要だ。回答では、そういう家族や親族がいる割合は75.3%と高かった。しかし、助けを求めたり相談したりできる友人については、「いる」との回答が大幅に減少して、51.2%だ。これは逆に言えば、半数は親友がいないということだ。
さらに職場の場合は、相談できる相手がいるのは33.6%と3割まで減った。一日の大半を過ごす職場で孤独を感じている人が多いということだろう。諸富さんは「3割というのは予想外に少ないですね。仕事で困ることはたくさんあるはずで、これは非常に孤独です。職場でヘルプシーキング(援助希求)できるような仕組みに改善していく必要があります。人に助けてもらうのは正しいことだという認識を持つことが大切。そうしないと孤独が蔓延し、仕事の生産性が低下、離職率も下がりません。企業にとっては大きな問題だと思います」と話す。