巨大台風のピンチを、チャンスに!
そんな中、18年の夏には大阪北部地震に加え巨大台風21号が大阪を襲った。とくに台風21号に関しては、強風にあおられたタンカーが関空への連絡橋に衝突し、大阪の玄関口が一時閉鎖された。
このピンチにも溝畑氏は「チャンスに変えてやる」と燃え上がった。第1・第2ターミナルすべての旅客施設が被災前の状態に戻るには、2週間以上かかり、その影響で「9月の空港利用者は前年に比べ大きく落ち込んだ」。しかし、外国人訪日客に地下鉄やバスを自由に利用できる「大阪周遊パス」を無料配布したり、休日も対応する観光相談本部を設置して多言語の専用電話も設けたりするなどの対策を発表。その結果10月の関空利用者数は前年比で103%となった。18年の総インバウンド数に関しても「前年を上回る見込み」だそうだ。
今後は「長期的にはアジアの富裕層にアプローチしていきたい」と語る溝畑氏。MICE(報奨旅行、会議、研修会、展示会)施設の強化にも目を向ける。「世界レベルのMICE施設は国際会議場に加え、ショッピングやエンターテインメントが複合した10万人規模の施設が標準。大阪がパリに勝つためには、このような世界レベルの施設も必要になってくる」と力説した。
ラグビーワールドカップ2019日本大会、ワールドマスターズゲームズ2021関西、G20大阪サミット、万博と国際的イベントが多く待ち受ける大阪。現在のビジョンが実現すれば、大阪がパリと並ぶ日も遠くはない。溝畑氏の言葉には、ただの大言壮語とは思えない説得力と熱量がある。
溝畑氏が精力的な活動を続けるのは行政側の望んだ動きでもある。大阪市長の吉村洋文氏は「大阪の観光については、官から民への移行を強く意識している」と語る。
「溝畑氏のように、自ら率先して動き、新しいものをつくっていこうという動きは、トップが天下りでは生まれない。現在では施設の管理やプロモーションも民間の力を借りることで、多くの観光客を集客できている」