いわゆる「お役所仕事」のようにスローペースな開発ピッチの自治体が多い中で、これだけハイペースで官民一体となった開発が進んでいるのは、どういった要因があるのか。

「きっかけは大阪市長に橋本徹氏が就任し、関西国際空港の民営化やIRの推進など、チャレンジングな方向に転換していったこと」

大阪観光局長 溝畑 宏氏

当時観光庁長官を辞めたばかりの溝畑氏は、当時の府知事だった松井一郎氏や橋下氏に要請され、大阪府特別顧問に就任した。大阪を盛り上げる、と決意した溝畑氏は、就任当初から「やるからには世界の一番を目指す。だからライバルは東京でなくパリ」という志を持って大阪の開発にあたっていた。その原動力となったのが、経済が東京へ一極集中している現状への怒りだった。

「大阪の平均所得はリーマンショック以降低迷を続け、今では東京に大きく水を開けられました。先述のように、大阪にはこれだけ資源があるのにですよ。日本がハングリー精神を持ち、国際競争の舞台に立てるようにするには、東京に一極集中している“ゆがみ”を正さなければならない。その第一歩が大阪です」

溝畑氏は「僕は五代友厚ですよ」と自身を表現する。激動の明治において海外に目を向け、数々の商業施設を設立し大阪を復興させた薩摩藩士、五代友厚のように、自分も大阪という舞台で戦いたい。五代友厚の姿を自身に重ねているのだ。だが彼の目指すものは、まだ先にある。

「まず強化が必須なのは、空港の受け入れ態勢。現在は関西3空港を合わせても収容人数が4700万人で、6000万人収容可能なシンガポールのチャンギ空港に大きく後れを取っています。観光分野の発展を続けるには、空港の収容力が大きくなることが必須になる。現実的には様々なハードルがありますが、関西3空港の一体化は大きな目標です」

また、溝畑氏が今後のキーとして注目するのは“消費の質”だ。

「観光客数よりも消費額を誇っていることからもわかると思いますが、今後も消費の質を伸ばすことに力を入れていきたいと思っています。具体的にはクラブやエステ、バーなど、ナイトスポットを増やし、消費の時間軸を伸ばしていきたい。今までは夜9時までしか消費できる場所がなかったのを、深夜まで消費できるような場所にしていきたいです」