本当にしたいのは「結婚」だった
普段は冷静沈着な行員の田所さんを不安に駆り立てもの、それは「35歳」という年齢でした。結婚していく同僚や産休・育休を取る後輩を尻目に、「キャリアばかりを積み重ね、35歳になっても未婚の自分」は職場で一体どう見えるのか――。そう思いつめた結果、「人生リセット留学」という結論になったようでした。
さらに話を聞けば、田所さんは35年間、一度も男性とお付き合いしたことがないということでした。かわいらしいお嬢さんだったので意外でしたが、さらにびっくりしたのが、実はキャリアを積みたいわけではなく、本当に一番したいのは結婚だった、ということです。
驚いた反面、こういった華々しい経歴のキャリア女性が、「実は専業主婦になりたかった」ということは少なくありません。本当は結婚したいだけだったのに、ひとりで生きていくことも考慮して身を守るためにスキルを磨いた結果、おのずとキャリアウーマンになってしまったというわけです。多彩なスキルや華々しいキャリア、高収入という生きるための防衛策が、婚活においては男性をビビらせる足かせとなることも多く、悪循環に陥りがちということでした。
「ハイスペックだけどやりたいことは曖昧」で就職難
その後、田所さんは見事MBAも取得して帰国しましたが、やはりライフプランも貯金もありません。就職活動を開始するものの、「ハイスペックだけどやりたいことは曖昧」な彼女を企業側も扱いかねたのか、思うように会社も決まらないのです。
そこで彼女はとりあえず実家暮らしをしながら、ほそぼそと翻訳の仕事をフリーランスでやり始めました。この時点でまた私のところに相談に来てくれたので、まずは現金を生活費3カ月分貯めてくださいという話をし、節税対策のための小規模企業共済もすすめました。
もともと堅実な方ですし、実家暮らしも奏功してすぐにそれなりの貯金はできたようで、また投資信託も始めています。仕事面はまだまだ不安定なようですが、MBA留学によってできた人脈で大企業からの依頼もあったそう。年収は500万円程度になりました。時間はかかるでしょうけど、このまま順調にいけば親御さんへの借金も返せると思います。