もらえるお金編
老後の生活を支える補助金や給付金
大切な退職前のテクニック
一説に、老後に必要な貯蓄額は3000万円とも5000万円ともいわれる。「でも、ウチにはそんなに貯金がない。定年後の生活はだいじょうぶだろうか」と不安に思う人が少なからずいる。自助努力はもちろん大切だが、実は年金以外にも国からもらえるお金があることは意外と知られていない。
国や地方自治体などの助成金や補助金に詳しいファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは、「国や自治体からもらえるお金は意外と多い。各種補助金や給付金などがそうです。仕事、医療・介護、住宅などさまざまな分野にあるので積極的に活用したいものです」とアドバイスする。
とはいうものの、国や自治体が積極的に教えてくれるわけではない。自分で調べて申請する必要がある。代表的なものをの図3にまとめたので、積極的に活用していただきたい。
たとえば、会社を定年退職する際にもテクニックがあり、事前に手続きすれば得する制度がある。その1つが「傷病手当金」だ。退職後も働きたいと思っていたけれども病気で働けない場合、在職中の標準報酬日額の3分の2の金額を退職後も1年半もらえるというもの。ただし条件があり、退職する前に4日間以上連続で、病気やケガで会社を休まなければいけない。仮に3日連続で休み、4日目に退職すると、受給資格が得られないので注意したい。
もう1つ、退職前にぜひやっておいてほしいと井戸さんがすすめるのが、人間ドックなどの精密な健康診断だ。
「もしも検査で大きな病気が発覚した場合、医療機関にかかり初診日を在職中につくっておくことが重要なポイントになります。たとえば、がんが見つかり臓器を摘出などすると、『障害年金』が受け取れる可能性があります。国民年金から支給される『障害基礎年金』と厚生年金から支給される『障害厚生年金』があって、障害基礎年金は基本的に誰でも受給できますが、障害厚生年金は初診日が退職前であることが条件になります。具合が悪いけれど、定年退職してからゆっくり病院に行けばいいなどと考えてはいけません。障害厚生年金のあるなしでは、もらえるお金で大きな差が出ます」
会社の健康保険も大事にしたい。手続きにより退職後も任意で2年間継続できるからだ。大きな病気で医療費が膨らんだとき、通常は高額療養費制度が使えるが、健康保険に加入していれば、自己負担額がさらに低くなる可能性がある。「通常の高額療養費は自己負担の上限が8万~9万円ですが、健康保険組合だと同2万~3万円のところが多く、かなりの差になります。健康保険の継続は退職した翌日から20日以内に手続きをしなければならないので、退職後最初にやるべき手続きだと肝に銘じておきましょう」と井戸さん。