高齢者はお金を借りられない──。そう誤解していないだろうか。定年後の借入先、給付制度はこんなにあった! 賢く使って、老後資金の不安をスッキリ解消しよう。
借りられるお金編
「年金=安定収入」で有望な貸出先に

旅行にマイカーの買い替えなど、定年退職後の生活を考えると、さまざまなプランが浮かぶ。しかし、虎の子の退職金は住宅ローンの返済に充ててしまい、その大半がなくなってしまった。頼れるのは年金だけ。「その年金は目減りする傾向にあり、どこかでお金を借りなくてはいけない人が増えてくるかもしれません」と、終活アドバイザーも務めるファイナンシャルプランナーの廣木智代さんはいう。

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果たして、高齢者でもお金を借りることはできるのか――。実はできるのだ。どの金融機関も貸出先の開拓に悩み、最近では「年金収入=安定収入」ととらえ、高齢者向けの融資商品を取り扱うところが増えている。

その代表例が信用金庫の「シニアライフローン」である(図1参照)。「シニア」と銘打つだけに、融資の対象年齢は満60歳以上から。融資の上限額は100万円程度で、リフォーム費用、自動車購入費、旅行費用など使途も多岐に及ぶ。気になる担保や保証人は不要だ。また、金利も固定型で2.50%、変動型も2.375%など、通常のフリーローンよりも低めに抑えられている。

リフォームの特例制度もあり

高齢者向けの金融サービスでテレビや新聞などでよく見聞きするのが「リバースモーゲージ」だ。現在住んでいる自宅を担保に入れ、その評価額に応じて利用可能額が決まる。そしてその一定範囲内で、年金形式または一時金で借り入れができる。返済は借り入れた人が死亡したときに、担保に入れた自宅の売却代金が充てられる。

「でも、実際にリバースモーゲージを利用できるのは、東京の都心など不動産の価値が高い一部の地域の戸建て住宅所有者だけです。それに同居人は配偶者しか認めてもらえなかったり、相続人の同意があらかじめ必要だったりして、意外と使いづらい点があります」と前出の廣木さんは指摘する。

実際に定年後の借入需要として一番大きいのが住宅のリフォームだ。そこで注目に値するのが、住宅金融支援機構が行っている「高齢者向け返済特例制度(バリアフリーリフォーム)」である。対象は60歳以上の高齢者で、なんと年齢の上限はない。また対象となる工事は、一戸建て住宅の(1)床の段差解消、(2)廊下幅および居室の出入り口の幅員の確保、(3)浴室および階段の手すりの設置で、いずれも定められた基準に適合するものでなくてはならない。

大きな特徴は100万~500万円の融資を受けたお金の返済方法だ。借入時に、自宅の建物と土地に住宅金融支援機構のための第1順位の抵当権が設定され、担保に入る。そして、申し込みをした人が亡くなった際に、担保の建物と土地を処分し、その売却代金で一括返済する。ある意味でリバースモーゲージの“変型バージョン”といえる。