怠ってはいけない事前の申請

なかには、定年退職後に起業を考えている人もいることだろう。会社を立ち上げるまではいかなくても、これまでの経験や知識を生かして個人事業主やフリーランスとして働くこともできる。

そのときに専門性の高い資格があると強い武器になる。そこで活用したいのが「専門実践教育訓練給付金」である。国が指定したMBA(経営学修士)や看護師、介護福祉士、言語聴覚士、調理師、栄養士などの専門資格を取得するための講座を受講すると、費用の50%(年間上限40万円)を支給してくれるというのだから、実にありがたい話ではないか。

「取得に2~3年かかるような専門資格は費用もかさみます。さらに資格を取得して就職した場合は、70%(年間上限56万円)になるというかなり手厚い給付なので、専門資格を取得したい人にとってはとてもおすすめです。ただし、退職後1年以内に始まる講座という条件があるので、退職前にいろいろ調べておくことが大切です」

そして、老後にかかるお金のなかで大きいのが、住まい関連だ。老朽化した自宅の修繕やバリアフリー化などのリフォーム費用はけっこうな額になる。そんなときに役立つのが「住宅リフォーム助成」。多くの自治体で制度を設けており、東京・大田区では上限20万円まで助成している。ただし、これも注意が必要だ。

「助成金や補助金全般にいえることですが、特に住まい関連では事前申請が必要な場合が多いので要注意です。先に工事をしてしまってからでは対象にならないことがほとんどなので、リフォームなどをする際は、先に自治体に問い合わせるようにしましょう」

ここに紹介した以外にも、国や自治体からもらえるお金はたくさんある。また、税金が控除される制度も多い。それらを有効に活用するためには、何よりも知識が必要不可欠だ。表を参考に自治体のホームページなどを小まめにチェックしていただきたい。

廣木智代(ひろき・ともよ)
ファイナンシャルプランナー
家業のスナック閉店を機にお金の勉強を始め、ファイナンシャルプランナーに。2001年「HAPPYLIFE PLAN」を設立し代表に就任。終活アドバイザーも務める。
 

井戸美枝(いど・みえ)
ファイナンシャルプランナー
関西大学社会学部卒業。社会保険労務士、経済エッセイストとしても活躍。資産運用、ライフプランなど幅広くアドバイスしている。新刊の『大図解 届け出だけでもらえるお金』が話題に。