「子どもに甘く、息子のずさんな事業計画書だけでポンと何百万円もの資金を出してしまいます。まずそこを入念にチェックしましょう。本気であれば、親以外にも出資者を募るはずです。最近ではクラウドファンディングといった手法もあるので、親以外の資金調達法を提案してみてください」

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そうしたことすら試みようとしないのであれば、資本金を使い切ってしまうと、安易に、また親に頼る。そうなると、もう蟻地獄のようなもの。運転資金まで百万円単位で支出していたら、たちまち数千万円に膨らんでしまう。その結果、親子共倒れ寸前という相談者も少なくないという。

畠中さんは「開業資金は500万円が上限でしょう。それを食い潰したら成功する要素は少なく、見切るしかありません。まして追加援助はもってのほかです。心を鬼にして借入金の保証人にはならないこと。老後のための蓄えが尽きてしまったら、年金だけでは生活を支えるのは無理です」と戒める。

娘が離婚し実家へ、息子はニート

離婚した娘が子ども連れで実家に戻ってきた場合も、悠々自適の定年ライフが脅かされるケースだ。

「離婚して一人暮らしをせず実家に帰ってくるのは、子連れの場合がほとんどです。親元にいれば食事など基本的な生活が保証されるため、不思議なぐらいに仕事に就かないケースが多くなる。アルバイトをしてわずかなお金を食費として入れるのがせいぜいです」(畠中さん)

親が孫の面倒を見てくれれば正社員として働けるはずなのに、そうせずに、健康保険も親がかりになってしまうという。これはニートの息子にも言えることだが、「さすがにもう親には頼れない」と認識するよう、親子の“甘えの構造”を断つことが第一にやるべきことだ。

「求職活動の方法を親子で調べましょう。アルバイトはダメです。契約でも派遣でもかまわないので、社会保険に加入できる“社員”のつく働き方をさせるべきです。ハローワークとは別に、これまで39歳までだった国の支援する就労支援制度が、ニートの高齢化に合わせ、2018年から地域によっては44歳まで拡充したので活用するといいでしょう。月に20万円までは稼げないにしても、その人の能力に合った就職先は見つけられます」(畠中さん)

これは全国の「地域若者サポートステーション(サポステ)」のうち10カ所をモデル地域に選定。専任スタッフを置き、「働き出す力」を引き出し、就労に必要なスキルを身に付けさせ、職場定着するまで全面的にバックアップをしてくれるという。

※44歳まで就労支援を行っているサポステ所在地:宮城・石巻市、埼玉・川口市、東京・世田谷区、愛知・名古屋市、滋賀・草津市、大阪・大阪市中央区、兵庫・神戸市、島根・松江市、愛媛・松山市、福岡・福岡市