三木谷氏が最初に狙っていたのはNTTドコモだった
長らく「楽天は本当に全国ネットワークを構築できるのか」と疑問視されてきたが、三木谷氏は「大丈夫、今は言えないが秘策がある」と語っていた。今回のKDDIとの提携が、その秘策だったわけだ。
三木谷氏が最初に狙っていたのはNTTドコモだった。しかしNTTドコモの吉沢和弘社長は「MVNOとして(NTTドコモの)ネットワークを借りつつ、キャリアとして新規参入し、しかもローミング契約してネットワークを確保しようというのはおかしい」と、楽天へのインフラ貸し出しを渋った。「第4のキャリアを名乗るならネットワークくらい自前で用意しろ」と言いたい気持ちは分からぬでもない。
ドコモとの交渉が難航すると見た三木谷氏は、ターゲットをドコモのより立場の弱いKDDIに変えた。
KDDIは3キャリアの中で「非通信」が最も弱い
KDDIの弱み。それは3キャリアの中で「非通信」のサービスが最も弱いことだ。楽天の参入で通信料により菅官房長官が言うような「4割の値下げ」が実現するなら、3キャリアの利益はその分目減りする。「非通信」を伸ばせなければジリ貧である。
3キャリアの中で「非通信」に一番強いのはソフトバンクグループである。傘下にヤフーをもち、ネットオークションの「ヤフオク」やネット通販の「Yahoo!ショッピング」がある。これらのサービスを使うたびに「Tポイント」が貯まる魅力もある。さらにソフトバンクはライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズや中国・滴滴出行などにも巨額投資を実行。トヨタ自動車ともモビリティーサービスの新会社を立ち上げることで合意した。
ドコモも「非通信」を育ててきた。定額で200誌以上の人気雑誌が読み放題になる「dマガジン」を先頭に、ネット通販の「dショッピング」やゲーム配信の「dゲーム」などを展開し、それらを使うと貯まる「dポイント」で横串を刺している。
KDDIは子供が就業体験できる施設「キッザニア」の運営会社を買収したり、英会話のイーオンホールディングスを買収したりしているが、散発的。自社のネット通販「Wowma!(ワウマ)」の知名度は低い。スマホの決済サービスでも大きく出遅れている。楽天の参入で携帯電話料金の価格破壊が予想される中、次なる「飯の種」に最も事欠いていたのがKDDIだった。