政府と二人三脚でMVNO市場を開拓してきた楽天

携帯料金値下げ作戦の第一弾は、3キャリアから通信回線を借りてサービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)の育成だった。政府と二人三脚でMVNO市場を開拓したのが楽天である。

政府は「MVNOの拡大を通じた競争の加速と通信サービスの自由な選択という観点から議論してもらう」(高市早苗総務相、当時)と、3キャリアに対して繰り返し、格安スマートフォンの事業者に貸し出している回線の利用料の引き下げを求めた。

しかし3キャリアはテレビCM攻勢でブランド力を維持し、MVNOはスマホ市場の1割程度にしか浸透せず、大幅な携帯電話料金の値下げにはつながらなかった。

「ならば」と打ち出したのが、3キャリアと同じく自前で通信回線を持つ「第4のキャリア」を送り込み、価格破壊を促す作戦だ。3キャリアへの「刺客」として政府から第一種通信事業者の免許を得たのは、またしても楽天だった。

石田真敏総務相をはじめ、政府は明らかに「親楽天」

楽天の参入が総務省に認可されたの今年8月、菅義偉官房長官は国内の携帯電話料金について「今より4割程度下げる余地があるのではないか」と発言。公共財である電波を使って稼いだ利益が、適切に消費者に還元されていないとの見解を示し、楽天を援護した。

2013年に産業競争力会議の有識者議員に就任してから三木谷氏は政府との距離を縮めてきた。菅官房長官や高市早苗総務相(当時)の援護射撃を引き出すために、入念な準備を続けてきたわけだ。

新たに総務相になった石田真敏氏は楽天とKDDIの提携を受け、2日午前の閣議後の記者会見で、両社のローミング(相互乗り入れ)契約について「電波の割り当てを受けた事業者が自らネットワークを構築するのが原則だが、新たな事業者について全国規模で自ら(通信設備を)構築し、一斉にサービスを提供することが現実的に困難な場合は、ほかのところを使うことも許容している」と述べた。政府は明らかに「親楽天」だ。

しかし、楽天にも不安はあった。3キャリアと同等の全国ネットワークを構築するには莫大な投資が必要だ。おまけに携帯電話は現在の4G(第4世代)から5Gへの移行期にあり、投資額はさらに膨らむ。楽天は「2025年までに6000億円近い資金を設備投資に当てる」と説明していたが、6000億円は3キャリアにとって1年分の設備投資額の水準にすぎない。