自民党議員は「これは自爆テロだ」と耳打ちする

高市氏が私案を撤回したことで本会議は45分遅れで本会議が始まったが、野党はもちろん自民党議員も高市氏のスタンドプレーには怒り心頭だ。

10月30日に開かれた党の副幹事長会議では、執行部側から「今国会は入り口でつまずいた。しかし、これは党の問題ではなく(高市氏)個人の問題だ」という突き放したような報告があった。口の悪い自民党議員は「これは自爆テロだ」と耳打ちする。

問題は(2)の「法案審議の方法」にあった

「高市私案」は、なぜこれほど与野党を混乱に陥れたのか。

3項目の提言のうち、ペーパーレス化や、押しボタン方式採決の導入は、賛否はあるが最近の国会改革を語る時、だいたい盛り込まれる「標準装備」の内容だ。

問題は(2)の「法案審議の方法」。高市私案によると「国会冒頭の大臣所信に対する質疑日数を増やし、法案審議は続けて行う。会期末前に残った時間は、議員立法の審査や一般質疑に充てる」とある。

少し言葉を補って説明したい。大臣所信の次に行うという「法案審議」は、政府提出の法案を指しているようだ。政府提出法案の審議が終わらなければ国会議員が自らつくった議員提出の法案(議員立法)や、法案とは直接関係ない行政のチェックや疑惑追及などの一般質疑は行えないことになる。

つまり政府側からみると、政府提出法案を審議している間はスキャンダルなどを追及される心配はない。会期末ぎりぎりに法案を成立させれば、ほとんど追及されずに国会が閉じることになる。政府側からみてこんなに楽なルールはない。

議員提出法案が日の目をみるチャンスが消える

小泉氏ら自民党若手議員たちが、疑惑などを専門的に審議するための特別調査会を提唱したことがあった。その際、野党側は「これでは法案審議と疑惑追及が、別の舞台で同時進行することになるので、悪法の成立を食い止めることができない」と反対していた。高市私案は「同時進行」どころか「法案先行」を提案しているのだから、野党の理解を得られるはずがない内容だ。

もう一つ、この提案だと議員提出法案が日の目をみるチャンスはほとんどなくなる。議員提出法案というと、野党議員がパフォーマンスで出すという印象が強いかもしれないが、実際は与党の若手議員たちが衆参両院の法制局や関係省庁と内容を詰めて提出するものも多い。高市私案の展開になれば、こういった取り組みにもブレーキがかかる。だから与党も、両手を挙げて歓迎するわけにいかない。