図らずも女性の体に手が触れ、非難の目で見られた場合、私は素直に謝ることをお勧めする。あえて声に出し周りにアピールしておけば、自衛にもつながる。謝った人間がそのまま、痴漢をするとは考えにくいからだ。
それでも痴漢を疑われた場合だが、被害者が恐怖のあまり泣いていたとしても、下手に同情するのは禁物。「やましいから同情している」と思われ、逆効果になる可能性がある。その身が潔白なら、毅然とした態度で臨むようにしたい。
供述がブレないことも重要だ。「よく覚えていない」といったひと言は、後の供述の信憑性を著しく低下させるので、決して口にしてはならない。頭に血が上っているなら、「身に覚えがないのにこうなり、混乱しているので、整理してからお答えします」と、その場の供述を差し控えても構わないのだ。
最悪のケースは、疑いが晴れぬまま警察に拘束され、さらに告訴、裁判にもつれ込んだ場合。まず警察には、自身の手に被害者の洋服の繊維が付着していないかなど、物証を取るように要請すること。身柄拘束を盾に自白を迫る刑事がいても、決して首をタテに振ってはならない。被害者が示談を迫っても応えるべきではない。「穏便にすますため」といわれるが、本当に穏便にすんだためしはない。一刻も早く弁護士に助けを求め、刑事事件に精通し、できるなら痴漢裁判の経験がある人物に弁護を依頼することだ。
日本の刑事裁判の有罪率は99%といわれ、冤罪を晴らすのは至難の業だが、裁判では熱意を持って無罪をアピールすること。VTRで状況を再現したり、少ない中からも物証を集めるなど、できる限りのことをすべきだ。
なお痴漢行為には各都道府県の迷惑行為防止条例(東京都の場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金)、悪質な場合は強制わいせつ(6カ月以上10年以下の懲役)が適用される。社会的制裁によりその後の人生も大きく左右される。疑われぬよう、慎重に行動したい。
ちなみに、体に触れるのに「手の平はアウト。手の甲はセーフ」という都市伝説はまったくのデマだ。あしからず。