介護編
おちとよこ

要介護認定が肝。区分変更申請も

総務省統計局の「就業構造基本調査」(2012年)によると、11年10月から翌年9月までの1年間に、家族の介護などのために退職した人は10万1100人。「介護離職」は大きな社会問題になっています。

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介護の始まりは、誰でもある日突然です。準備のないまま親や配偶者の介護に直面したことでパニックになり、仕事を辞めてしまう人があとを絶ちません。でも、介護は「いつまで」と区切ることができません。

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(15年度)によると、介護期間の平均は4年11カ月ですが、4~10年と答えた人も約3割います。当初は貯蓄や退職金で介護できても、長引けば自分の暮らしもままならなくなり、共倒れした例を数多く見てきました。長丁場の介護を乗り切るためにも、くれぐれも仕事を辞めて自分が直接介護しようと思わないこと。実際の介護はプロに任せ、親族は介護環境を整えるマネジメント役に徹しましょう。

私自身、16年に及んだ父と母のダブル介護をしていたときは、何度も「仕事を辞めよう」という考えが頭をよぎりました。でも、その都度、公的制度と情報に助けられ、なんとか仕事と介護を両立させることができました。

現在、経済的な負担を抑えながら介護していくために利用できるおもな制度は、介護保険、障害者支援、市町村の補助の3つ。その中心になるのが介護保険で、介護が必要な人の負担を社会全体で担うために00年にスタートした国の制度です。原則的に65歳以上で介護が必要な人は誰でも利用できるので、まずは住所地にある包括に相談しましょう。包括は高齢者支援のよろず相談所で、介護に利用できるさまざまなサービスの紹介や支援、手続きを行っています。

ここで要介護認定の申請をすると自宅などに調査員が来て、チェックリストや聞き取りによる調査が行われます。

調査結果と医師の意見書をもとに審査が行われ、要介護度が決められます。要介護度は、非該当、要支援1・2、要介護1~5の8段階。非該当になると介護サービスは使えませんが、数字が大きくなるほど使えるサービスの限度額が増えていく仕組みです。たとえば、要支援1の1カ月の利用限度額は約5万円、要介護5は約36万円。

サービス料金は1単位あたり10円(地域によって異なる)を掛けた金額で、利用者は使ったサービス料金の1~2割(18年8月以降は1~3割)を負担します。ただし、限度額を超えると全額自己負担になります。