冒頭の“大谷マンダラ”にダメ出しするのは、この行動目標の具体化という点がまだ十分でないからです。あいまいな単語や、抽象的な行動目標に終わっている部分がまだ多いのです。

ここでは「~する」「~させる」など、言葉を行動として表現することが重要。人の心理がより能動的になるからです。

ちなみに、大谷君の高校3年生最後のOW64は、非の打ちどころのない100点満点のマンダラでした(非公表)。彼は日本ハム時代もOW64を活用し、おそらくロサンゼルス・エンゼルス入団後も続けていて、故障者リスト入りした今は、再起を目標としたOW64でその実現に邁進しているはずです。

グループで、より真価を発揮する

OW64に酷似する真言密教のマンダラは、人間の思考を図形化したものだそうです。チベット僧が真ん中に書くテーマは「世界平和」。瞑想の中でマンダラの構成を考え、日々の修行の中で行動に移し、順番に開いてゆくことで真理に到達する。その聖なる図がマンダラであり、前述の時計回りも含めた構成上のルールがあるようです。

OW64も、自分では気づいていない夢や願いを掘り起こし、形にするものです。夢や願いをかなえる心の地図と言っていいでしょう。これに基づく詳細な設計図が長期目的・目標設定シートであり、その成果を確認するツールが日誌とルーティンチェック表です。

OW64は、もちろん1人で取り組んで効果があるツールですが、グループやチームでやると一段と大きな効果を発揮します。皆で、個々がつくったOW64を見せ合うのです。

よく最初の8マス、基礎思考が埋まらないという方がいますが、悪いことではありません。空白がある分だけ、まだその方に掘り起こされていない伸びしろがあるということです。考えを外に出すのに不慣れで、気づきが足りないだけというケースが多いのです。

そういうときは「ほかの人のシートで、いいなと思う言葉があったら、もらいなさい」とアドバイスします。試験ではありませんから、ほかにいいものがあれば、どんどん取り込んでいく。これを「知の移植」と呼びます。

グループの場合、個々のOW64を見せ合いつつ、グループ全体のOW64をつくります。すると、互いに徹底してパクることで「知の移植」が活発に起こり、目標とそれを実現するためのプロセスが共有されていきます。それがグループの目標達成力を高めます。

なでしこジャパンが世界一になったのも、ラグビーの日本代表が強くなったのも、この目標とプロセスの共有がなされていたからこそ。企業が関心を持つのも、相応の魅力があるからです。1度試してみてください。あなたがまだ気づいていない自分の願いと成すべき行動が、マンダラに描き出されるはず。あとは実践あるのみです。

原田隆史(はらだ・たかし)
原田教育研究所社長
1960年、大阪市生まれ。公立中学の陸上競技部をたびたび日本一に導いた「原田メソッド」で注目。著書に『一流の達成力』(共著)ほか多数。
 
(構成=高橋盛男 撮影=浮田輝雄)
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