ただし、企業の壁を越えた送客には、もちろんリスクがある。一方的な送客で終わってしまったり、客数が大して増えずに利益をむしばむだけで終わってしまったり、Win-WinどころかWin-Lose、Lose-Loseとなる恐れもある。しかし、それでも実施した背景には、外食業界の未来に対する危機感があるのだろう。
日本フードサービス協会によると、2017年の外食市場は前年比0.8%増の25兆6561億円。市場の飽和で伸びは力強さを欠いている。一方、中食市場は伸びが大きい。日本惣菜協会によると、17年の中食市場の規模は同2.2%増の10兆555億円と、初めて10兆円を突破した。
中食の勢いは、外食業界の大きな脅威になっている。このまま外食同士で消耗戦を繰り広げていては、コンビニエンスストアやスーパーなど中食勢に侵食されるという危機感がある。そこで、外食市場を盛り上げるために外食のライバル同士が手を組むことになったというわけだ。
吉野家では、「今回の3社合同定期券の販売目標は50万枚とし、提示率は25%を計画している」という。はなまるも「提示率を今春の20%から25%へ引き上げる」と説明した。ガストは今回初参加ということもあり、目標は特に設けていないという。
ツイッターで生まれた「ニクレンジャー」
吉野家とはなまる、ガストの3チェーンは企業の枠を超えて今回提携したわけだが、吉野家とガストは「外食戦隊 ニクレンジャー」で連携しているのも興味深い。
ニクレンジャーは外食5社で結成した“戦隊”で、ツイッターで生まれた企画だ。もともとは、吉野家のある社員がグループの肉関連企業を5社集めてニクレンジャーを結成するという企画を社内で提出したが、ボツになってしまった。
そこで、「もったいないから」と企画案をツイッターで投稿したところ、ガストの公式アカウントが反応。隊員「ガストレッド」のイラストを投稿し、その後、ケンタッキーとモス、松屋が加わってそれぞれにイラストを投稿し、ニクレンジャーが結成された……という筋書きだ。
吉野家はオレンジのコスチュームを着た隊員「ヨシノヤオレンジ」、ガストは「ガストレッド」、松屋は「マツヤイエロー」、ケンタッキーフライドチキンは「ケンタホワイト」、モスバーガーは「モスグリーン」というキャラを作っている。