言い換えれば、普及が遅れてきた分、海外で導入が進んできたキャッシュレス決済の方式がわが国に浸透する可能性はあるということだろう。その発想に基づいて、楽天やSNS大手のLINE、アマゾンがQRコードを用いた決済サービスの普及に注力している。

それは、IT企業が決済サービスからの収益獲得を目指していることを意味する。自社の決済サービスを導入する企業が増えれば、企業は消費者に関するデータ(ビッグデータ)を獲得できるだろう。それは消費者の需要を発掘するなど、自らを中心とした経済圏を構築することにつながるとの期待を集めている。

シェア争いはさらに熾烈に

理論的に考えると、QRコード決済をはじめキャッシュレス決済のシェア争いは熾烈化するだろう。特に、中国をはじめ、現金を使わない支払いが当たり前になっている訪日客の増加は、わが国の地方経済に無視できない影響を与えている。外国人観光客などが快適に買い物や移動を楽しめる環境を整備するためにも、キャッシュレス決済の普及は重要だ。

また少子化や高齢化、人口の減少が進むにつれ、わが国の経済は縮小する。企業や金融機関が収益性を確保する取り組みの1つとして、経費削減の重要性は高まる。そのために、キャッシュレス決済に関するテクノロジーを導入し、現金決済にかかってきたコストを削減しようとする考えは強まるだろう。

7月には、経済産業省が大手金融機関やIT企業、通信企業などとともに“キャッシュレス推進協議会”を立ち上げた。今後は、民間と政府の協働によって、消費者と企業が安心して使うことのできるキャッシュレス決済の規格策定が進むだろう。国内外の経験やノウハウを結集し、利便性と信頼性の高い決済制度の運用が進むことを期待したい。

(写真=時事通信フォト)
関連記事
孫正義も参戦、LINE「QR決済」の勝ち筋
QR決済が中国並みに普及するための条件
LINEの逆襲、手数料“0円戦略”の衝撃
中国の「シェアエコ」は日本より先進的か
アマゾンが密かに"クルマ参入"を企む理由