時間が経って飽きられると低迷する、という宿命

この10年ほど、世界のゲーム市場は伸長を続けているが、大きく伸びているのはスマホゲームを含んだモバイルゲームだ。今や市場シェアの約半分を占め、家庭用ゲーム機とPCはそれぞれ約4分の1に収まっている。まさに任天堂のスローガンである「ゲーム人口の拡大」を後押ししたが、その任天堂はスマホゲームに遅れて参入し、まだ収益の柱にはなっていない。

これまで見てきたように、任天堂のゲーム機ビジネスはユーザーの新しいニーズの掘り起こしに成功すればヒットするが、時間が経って飽きられると低迷する、という宿命を持っている。

今回のスイッチの世界的なヒットは、Wii Uの販売が低迷し3期連続で赤字を計上した後での事象だと考えると、奇跡に見えるかもしれない。しかし任天堂の過去のビジネスを振り返ると、飽きられたことによる低迷から革新的ハードによる復活というサイクルを繰り返した、ともとらえることができる。

変わりつつある、「孤高の中小企業」

それにしてもなぜ任天堂は、他社には作れない独自性の高いハードを出し続けることができるのだろうか。それは同社の企業文化に拠るところが大きいと私は考える。

優れたアイデアはゲーム業界の現場からたくさん出てくるが、それが現実のプロダクトに集約されていかない現状がある。他社から入ってきた情報や業界の常識に影響を受け、大人数が多数決で採決していくことで、商品開発はどんどん個性が丸くなってしまう。

そうならないため、同社の山内溥元社長は中小企業であり続けようとした。少人数で濃密な議論をし、阿吽の呼吸で開発する、ということにこだわったのだ。結果、現場から出たアイデアが優れていると判断すれば、他社では却下されるようなものでも任天堂では商品化してきた。

企業構造も独自色が強く、山内社長時代はナンバー2を置かず、社長の下に開発部署を横並びにして競わせる、という形を採っていた。この構造が、家庭用ゲーム機が落ち込んでも、別の部署が開発した携帯用ゲームが台頭する、ということを可能にし、長期にわたって企業の躍進を支えてきた。