「月約6.5万円だと長男の生活費はまったく足りないです」

「仮に長男に障害年金が出たとすると、いくらになるのでしょうか?」

母親は目線を下に移し、少し言いにくそうにそう質問をしました。

確かにお金の話は質問しづらいかもしれません。しかしとても大事なことです。私はできるだけ具体的な金額を出しながら説明するようにしました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/StockGood)

長男は国民年金に加入している間に初めて病院に行ったので、国民年金から支給される障害基礎年金に該当します。ただし、障害年金をもらうためにはさまざまなハードルをクリアする必要があるので、必ずしももらえるわけではありませんのでご注意ください。

障害基礎年金は1級と2級があり、症状の重いほうが1級です。うつ病で1級が認められるケースはほとんどなく、2級になることが多いです。もちろん2級より軽いと判断された場合は障害基礎年金をもらえません。

障害基礎年金は2級であれば年額で77万9300円、月額にすると約6万5000円になります(2018年度の金額)。

「月で約6万5000円だと、将来の長男の生活費はまったく足りないですよね……」

母親は心配そうにつぶやきました。

子供に残したいお金は2000万~3000万円

今回のケースに限らず、親亡き後の子供の生活費は公的年金の収入だけでは足りない、という家庭は多いように思われます。

そのため、親御さんが足りないお金をできるだけ準備してあげる必要があります。ざっくりしたイメージですが、子供に残してあげたいお金はだいたい2000万円から3000万円ほどです。もちろんこの金額は子供の収入や生活のしかたによって変わりますので、必ずしもその金額が必要になるわけではありません。

「そんな金額が準備できるかどうか自信がありません……」

親御さんが全額を準備するとなると戸惑ってしまうことでしょう。そこで私はある家族のエピソードをご紹介しました。

かつて私が担当したある家族では、将来の見通しを立てた後、障害年金のお金の使い道を話し合いにより次のように決めました。

月2万円を子供ご本人の小遣いに、残りの4万5000円を貯金にする。なお、このようなお金の使い道は親御さんがトップダウンで決めるのではなく、子供とよく話し合って決める、というところが大切だと思います。

仮に今後も障害年金を受けることができたものとし、月4万5000円の貯金を30年間続けたとすると、4万5000円×12カ月×30年=1620万円になります。親亡き後のお金の心配をしている家族にとってはかなりの金額になるといえます。