18歳以降に、男子は反社、女子は風俗に流れてしまう現実

――「恩恵的福祉観」から脱して、社会が虐待を受けた子どもの福祉を行うにはどうすればよいのでしょうか。

福祉経済学的な言い方をすれば、子ども福祉に投資をしておけば、その人たちは将来納税者になります。海外で虐待対策が進んだ理由の一つに、福祉経済学の存在があるんです。子どもの虐待対策をしっかりやることで、将来のコストがどれだけ削減できるかを試算しました。

虐待対策が中途半端だった場合に、生活保護や障害年金がどれほど支払われるのか、犯罪が発生したり、精神病院に入院したりすることになるのか。その試算結果を踏まえて、社会的なコストを削減できるのなら、虐待対策にお金を投入しようとなりました。

また、今の社会的養護は基本的には18歳で打ち切られます。22歳までは施設や里親家庭が子どもを養護できるようになりましたが、基本的には18歳です。そのため、社会的養護が必要な子どもたちの進学率は、大学・短大・専門学校を合わせても22%です。高校以降の教育を受けられる一般家庭の子どもと比べて、世の中に出る時点から大きなハンディを負っています。

高卒で就職をしても、1年で仕事を辞める人が40%で、3年だと70%。それを受け止めているのが男の子だと反社会的勢力、女の子だと性風俗店などです。社会がそういう実態を放っておいていいのかという問題もあります。

今の日本に必要なのは、社会的養護のきちんとした仕組みです。もちろん児童相談所も強化するべきですが、児童相談所は入口です。社会でその子どもたちを健康的に育てていく装置がないと、保護するだけになってしまいます。高齢者福祉は自分の明日ですが、子ども福祉は社会の明日のためにあるのです。

西澤 哲(にしざわ・さとる)
山梨県立大学人間福祉学部教授
1957年神戸市生まれ。大阪大学人間科学部卒。サンフランシスコ州立大学大学院教育学研究科カウンセリング専攻修了。現在、山梨県立大学人間福祉学部教授(学部長)。情緒障害児短期治療施設心理士、大阪府心理技師、日本社会事業大学専任講師、大阪大学大学院人間科学研究科助教授を経て現職。
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