「里親養育6:施設養育4」が日本に合っている

――世界的に見て日本の社会的養護の環境は遅れているといえますが、日本はどんな状態を目指せばよいのでしょうか。

まずは家庭養育ができる状態を作ることと、施設の小規模化・専門強化・高機能化が必要です。ドイツでは保護された子どものうち、里親養育を受けるのが6割、養護施設での養育が4割で、日本もこれくらいの割合を目指すべきだと思います。養育が難しい状態ですぐに里親家庭のもとに行っても、里親失敗となってしまうからです。

施設で治療的な養育と医学的・心理的な治療を行い、家庭養育ができる状態まで子どもを回復させる必要があります。特にアタッチメントに障害のある子どもと性虐待を受けた子どもは、いきなり里親家庭に行くのは難しいです。

里親も増やしていかなければなりません。そのためには休眠里親の実態調査をする必要があります。日本の登録里親数は約1万1000ですが、実際に里親委託をされている里親の数は約4000です。その人たちがなぜ里親委託をされていないのか。登録している人が高齢化した場合もあれば、里親への不信感で子どもを委託しない児童相談所もあります。

「里親は嫌だけど施設ならいい」という親はいるはず

例えばシングルでも里親登録はできるのですが、現場の判断で里親委託をしていないケースもあるのです。その判断が妥当なのかを調べる必要があります。また、里親になるための研修を手厚くすれば、里親委託を受けられる里親が増えるかもしれません。

また、児童福祉法第27条は里親養育を妨げている最大の要因と言われています。親の同意に基づいて子どもを施設や里親家庭に委託する法律ですが、「里親は嫌だけど施設ならいい」という親は少なからずいます。「自分の子どもを取られるような気がする」という心情は理解できますが、子ども福祉の観点から、児童相談所が里親家庭か施設かを選べるように変われば、里親委託の数は増えるはずです。

同時に、児童相談所の職員の意識を変えていく必要もあります。大分県と福岡市の報告書によれば、児童相談所の職員が「里親のほうが子どもにいい」というコンセンサスを持ったことで、その2つの自治体では里親率が急激に上がりました。