タダ同然で、銀行から借り入れるよりも断然お得

そんな疑問にまず金融市場の観点から答えてくれるのがBNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈さんで、「17年の社債発行額は16年と同様に12兆円を超えた。日本銀行の異次元の金融緩和で、いまは有利な利回りで発行できる。一方、米国・欧州が引き締めに転換し、国内市場にも金融引き締めへの転換、金利の先高観も漂い始めた。それなら、いまのうちに少しでも多くの資金を社債で調達しようという心理が、トヨタをはじめ各社の財務担当者の間で働いたのだろう」という。

その際にトヨタが発行した3年債の利回りは0.001%。100万円調達しても、1年間の金利はわずか10円だ。それゆえ「タダ同然で、銀行から借り入れるよりも断然お得」と評される。でも、資金の調達なら株式の発行でもできる。なぜ、社債なのか?

「業績が悪くなれば配当が無配になり、倒産すれば株式自体が無価値になる。そのため株式での資金調達は、利回りや元本が保証されている社債や銀行融資と違い、高いリスクを負っている。それだけに株主の期待収益率は当然高くなり、ある調査によると日本企業の場合は10%ともいわれる」と公認会計士の林總さんはいう。結果、株式を発行する企業はそれに応える必要があり、割高なコストの資本となってしまう。