上京してから1年3カ月が経ったころ、本当に何かの偶然で不動産屋のウェブサイトを見ていた時、私は衝撃を受けました。なんと、東京には郊外というエリアがあり、そこでは同じくらいの広さの部屋でも、家賃3、4万円台の物件がゴロゴロしている、というのを発見したのです。
やっぱり、7万円という家賃は異常に高かったんだ、これ以上、異常なものに自分を合わせなくていいんだ――。
私の直感的な疑問を肯定してもらったような気になって、それだけでもずいぶんラクになりました。
いま振り返ると、四畳半の北部屋に7万円も払うなんてアホかと思いますが、それは知識が身についた今だから言えること。上京したばかりの田舎者の私にとって、「東京でも郊外に行けばアパートは安く借りられる」ことに気がつくのは、とても難しいことだったのです。もっと早く気づいてさっさと引っ越していればよかった、と思うこともありますが、こればかりは本当に、タイミングというものがあるのかもしれません。
東京で家賃7万円なんて普通だよ、と言われたら、「あなたにとってはそうなんですね」と思っておけばいいのです。
他の誰でもなく、自分にとっては高い、というのがわかっただけでも、「自分だけの幸せのサイズ感」に一歩近づいたということなので、喜ぶべきことです。
自分にちょうどいい「幸せのサイズ」
自分にちょうどいい幸せのサイズ感がどれくらいなのかは、当然ですが人それぞれ。初めからわかっている人は稀ですよね。やはり親元を離れ、すべて自腹で生きるという経験をしないと、自分には何が必要で何が不要なのか、真剣に問いかけることをしないまま済ませてしまいがちです。ひとり暮らしをすることの最大のメリットは、「どうすれば自分が幸せなのかに強制的に向き合わされる」ということかもしれません。
それから新しい環境では、何が普通で何がおかしいのか、初めはわからないこともあります。最初は何度か失敗もするでしょう。
でも、その社会で当たり前とされていることは、必ずしも正しいとは限りません。みんなが当たり前のようにこなしていても、自分は苦しいと思うなら、それでいいんです。自分だけの実感に、他人がとやかく言う筋合いはありません。他人と比較して、どちらのほうがより苦しいというのも無意味です。
ただ、苦しいと思ったその気持ちは、そこから抜け出すためにいつか必ず役に立ちます。それまでどうか失くさないようにしてください。自分だけの実感を、「社会の当たり前」に明け渡してしまわないことが大切です。