出張の疲れを癒すビジネスマンも多いホテルのプールやジム。これらの施設は高級ホテルの代名詞であるとともに地域の「クラブ」としての役割も担っており、プールはホテルの顔になることも。その成り立ちとともに、日本とアジアの代表的な例を見ていきましょう。

高級ホテルの証となるプール、ジム、スパ

トレーニングやリラクゼーションのためのスポーツ系施設を持つ高級ホテルは多い。ジム、プールに近年はスパが加わり3点セットのようになっている。大浴場やサウナが付いていることもある。普段から運動する習慣がある人は旅先でもライフスタイルを維持できる。そのため、こうした設備があるホテルを指定して宿泊する著名人もいるし、設備の存在が高級ホテルの証になっている面もある。

特に、昔の日本のホテル業界では、建築と維持に多額のコストを要する室内プールを持つことが、ホテルにとってのステータスと考える傾向があったようだ。こうした施設は宿泊者だけではなく、会員制で地元の客にも利用されており収益面では対宿泊者よりも大きい。

ホテルのスポーツ系施設がもつ「クラブ」的側面

日本ではなじみが薄いが、米国や英国では「クラブ」が非常に盛んである。アジアでも欧米人が多く居住するシンガポールや香港でよく見られる。特定の目的や人物の元に集まった人たちの組織で、スポーツや飲食の施設を持っている。楽しみながら会員が交流することを主な目的としていて、ここから新しいビジネスが生まれることもある。

クラブは都市部のものをシティクラブ、田園地帯のものをカントリークラブという。カントリークラブではゴルフやテニス、馬術などのスポーツ施設と飲食施設(クラブハウス)、シティクラブではほぼ飲食施設だけのところに加えてスポーツ施設も併せ持つクラブもある。日本のホテルの会員制スポーツ施設は、会員用の飲食施設はあまりついていないものの、こうしたクラブの側面は持っている。

高級ホテルのスポーツ施設では、入会金、年会費等が相応の金額になるため会員がほぼ一定以上の所得層になりやすい。それもあって交流が活発になり会員相互が親しくなるケースも多い。

こうした面が強いのは、東京ではホテルオークラのクラブだろう。会員には著名な人物も多く会員間の交流も盛んで、ここで親しくなってホテル内のレストランで朝食などを摂りながらビジネスに発展するケースもある。「オークラのスポーツクラブ人脈」ともいわれる。

ホテルでは会員だけでなく宿泊客が利用する場合でも、運動しながら互いに話すこともあるから、高級ホテルのスポーツ施設は“社交空間性”と“クラブ性”を持っているといえるだろう。