今後さらに高齢化が進んでくれば、「安心して見られるあの作品をもう一度見たい」という需要は確実に増えるでしょう。ネット配信の方法を整えれば、海外にも売ることができます。こうした隠れた需要が存在しているのに、何もしないのはおかしな話です。
このところ変化の兆しが見えてきているようですが、日本国内の事情として、男性タレントを数多く圧倒的に持っている某事務所所属のタレントがコンテンツに出ているとそれをネットで販売できないという大きな障害があります。ただし、その事務所所属のタレントを出演させるよりも、ネットで配信するほうが結果的にメリットが大きいという見通しが立てば、「その事務所所属のタレントは使わない」という判断もコンテンツによってはできるはずなのです。しかし、その判断はまだどこからも出てきません。
結局のところ、新しいことにチャレンジしない体質が日本のテレビを世界の潮流から孤立させ、その姿勢が自らを弱体化させていくのでしょう。
「地上波」にしがみつけば衰退一直線
「地上波」というのはいまだ明らかに1つのブランドです。ただし、そのブランド力にいつまでもしがみつき、変化を恐れるようなら、間違いなく衰退の道を歩むことになるでしょう。
テレビ離れが進んでいると言われながら、テレビ局は今でも面白いドラマやバラエティ番組を作り続けています。今後、コンテンツを発表するメディアを増やすことができれば、コンテンツ制作を行うテレビ局は今後も生き残れます。
作品を作りたい監督や脚本家、出演したい俳優は、メディア業界にたくさんいます。人気のある俳優でも、年に2本のドラマとCMの仕事しかしないという人はいくらでもいるのです。彼らに仕事を依頼すれば、確実にコンテンツを増やしていけるでしょう。露出の機会を与えられるのは、俳優にとっても嬉しいはずです。
求められるのは、放送業界に所属する人たちの意識改革です。もともとプロデューサーやディレクターにとって自分たちが制作したものを多くの人に見てもらえるのは願ってもないことなので、意識を変えて多角的な制作に移行するのはさほど難しくはありません。
それよりもネックなのは、テレビ局の経営陣の意識改革ではないでしょうか。現在の経営トップたちは、テレビがエンタメの主役だった時代を生きてきた人たちです。したがって、ネット配信やパッケージ販売については、キワモノという考えを持っている可能性があります。仮にそうであれば、ネット配信やパッケージ販売に抵抗のない世代に経営をバトンタッチできるかどうかが生き残りのカギになるでしょう。