ソニーは「スマホの下請け」として経営再建

スマートフォンの登場は、産業構造にも大きな変化をもたらした。フェイスブックなどIT企業の急成長はスマートフォンの普及なしに考えられない。それによって、ネットワーク上に人々の思考などに関するデータが蓄積され、“ビッグデータ”の重要性も高まった。企業経営だけでなく、日常生活のいたるところで10年前にはなかった発想が当たり前になっている。

ソニーの復活も、そうした変化を象徴している。ソニーは経営戦略の失敗から業績低迷に陥っていたが、モバイル機器向けイメージセンサーの需要拡大によって経営再建を遂げた。見方を変えれば、ソニーはウォークマンなどのヒット商品を自ら生み出す企業ではなく、世界のスマートフォンメーカーの下請け企業としての存在感が大きくなっているのだ。

シャープを買収した台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業のも、スマートフォン関連の需要に支えられ、成長した企業だ。同社の稼ぎ頭は、アップル製品の組み立ての受託である。

驚くほどの新機能は乏しくなっている

スマートフォンへの需要が減少し始めたということは、こうした成長のトレンドが維持しづらくなっていることを示唆する。iPhoneの新機種が発表されても、人々が長蛇の列をつくることは少なくなった。それは驚くほどの新機能が乏しくなっているからだろう。世界全体で、買い替えまでの期間も長期化している。

これはスマートフォンの“コモディティー化”のサインだ。デザインや機能面での差別化が難しくなり、低価格化が進む。実際、高価格帯に強みをもつアップルやサムスンよりも、低価格モデルを手掛ける中国の華為技術(ファーウェイ)、OPPO(オッポ)などのほうが出荷台数の伸び率が高い。

スマートフォン出荷台数が初めて減少に転じたことは、リーマンショック後の世界経済を支えてきたモバイル・デバイスのイノベーションが一巡しつつあることを示唆している。このためスマートフォン関連の需要を取り込んできた企業にとっては、それ以外の分野で、新しいヒット商品、あるいは付加価値の高いプロダクトなどの創出が求められている。