――ネットのレビューは読まないのですか?
全く読まないです。それに関しては経営学者の楠木建先生がド正論を言い放たれました。
僕が先生と対談したとき、質疑応答で、ある学生が「先生は本を選ぶとき、ネットのレビューをご参考にされますか?」と、緩めの直球を投げました。すると「名前すら明らかにしない有象無象の人が好きなことを書きなぐっている欄を読むのは時間のムダだ、というくらいの分別は君にもあるよね?」と。
――新聞の書評とは、それほど信頼度が違うんですね。
100倍以上の差があると思います。素人の口コミも、参考程度に読むのはいいでしょう。
――ベストセラーのなかにも、読むに値しない本はある?
はい、たくさんあります。売れる本と良書は違います。テレビで話が上手くて有名な学者が、学会で全く評価されていないケースはたくさんあります。短期的に見ると、一流の学者が書いた専門書は、三流の学者が書いたわかりやすいトンデモ本に淘汰されてしまう。
だから僕はいつも、ベストセラーであっても新聞の書評に載ってから読むのがちょうどいいと言い続けています。
自分で選ぶのであれば、最初の10ページが面白くて、かつ出所が明らかで相互に検証可能なデータを用いていることが最低条件ですね。
Answer:ベストセラーでも、新聞の書評欄に載ってから読むのがちょうどいい
立命館アジア太平洋大学(APU)学長
1948年、三重県生まれ。京都大学卒業。日本生命ロンドン現地法人社長、ライフネット生命社長・会長を経て、2018年1月より現職。