人間である限り、「風度」には心を動かされる

戦場での武勇によって「鬼のようだ」と恐れられながら、「部下あっての自分」という立ち位置を知っていた道雪には、人を動かし、心をつかむ「風度」が備わっていた。「風度」とは、人格、器量、風格、魅力、カリスマ性などが混合されて発せられる全体的な雰囲気のことで、「この人なら」「あの人らしい」と周囲に思わせるもので、一種のオーラでもある。つまり、「風度」は相手の人間に対して、「この人の言うことなら信じ、この人のやることなら協力するという動機(モチベーション)を生ませる導因のこと」である。

今のIT社会でもこの「風度」というのは最も必要なリーダーの条件だ。ITが発達すれば人間対人間の触れあいが薄れていく。そのためにかつてあったような、「スキンシップ」による、例えば後輩や部下に対するリーダーシップはなかなか発揮しにくい。だが、どんなにIT社会が発達しても、人間である限り「風度」には必ず心を動かされる。しかしその「風度」はある日あるとき完成し、それを一生持ち続けて活用できる代物ではない。年齢・立場・職位などによって次々と変わり、その人間にとって生涯追求するものである。

道雪は大変な努力と意志力、強靱な精神力によってハンディを克服し、そのなかで身についた「風度」によって、周りを味方につけることができたのだ。『名将言行録』には、道雪の人となりを遠く聞き知った甲斐(山梨)の武田信玄が対面を望む手紙を送ったと記されているほどに「風度」を感じさせる人物だった。

▼立花道雪に学ぶべきポイント
1:ハンディがあっても、前向きに雄々しく生きる
2:弱き武士は、育てられなかった大将に責任がある
3:「部下あっての自分」という立ち位置を自覚する

童門冬二(どうもん・ふゆじ)
歴史小説家
東京都企画調整局長、政策室長などを歴任し、1979年に作家として独立。著書は『小説上杉鷹山』『異説新撰組』『小説二宮金次郎』『小説立花宗茂』など多数。
 
(構成=吉田茂人 撮影=加々美義人 写真=iStock.com)
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