「名将」と呼ばれる偉人には共通点がある。「生き方ルール」とでも呼ぶべき信条をもっていることだ。「プレジデント」(2018年2月12日号)では、5人の名将の信条について専門家に考察してもらった。第4回は真田信之の「弱者の選択」という信条について――。

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真田家といえば、武勇名高い真田幸村(信繁)や知恵者で徳川家康を苦しめた父の昌幸の陰にあって、幸村の兄の信之の存在は目立たない。しかし、大坂夏の陣で最後まで幸村が徳川家に弓を引いたにもかかわらず、信之の働きによって、真田家は生きながらえた。

真田家の長男である信之は10代前半まで武田家で武将としての教養や嗜みを学んだが、織田信長によって武田家は滅ぼされ、昌幸は危機に陥った。信濃の小豪族でしかなかった真田家は織田、北条、上杉と主家を変え、昌幸は生き残るのに必死だった。そんな父の姿を見た信之は嫡男として自分も真田家を命がけで守ろうと決意した。