動物行動学でわかる“一緒にメシを食う”威力

嫉妬のマネジメントは上司の仕事だ。嫉妬されていると気づいたらまず上司を“使う”。嫉妬している相手を一対一のメシに誘うよう上司にお願いするのだ。上司はその席上で「あいつもおまえを認めている。私ももちろん、おまえを認めている」などと伝え、相手が愚痴っても反論せずに受け止めておけばいい。案外それでガスは抜け、組織の雰囲気もよくなるものだ。上司がだめならその上の上司、それもだめなら転職も視野に入れたほうがいい。

この場合、メシを一緒に食べるという行為が非常に重要だ。その根幹に動物行動学がある。動物は、警戒する相手と同じ餌箱からは絶対に餌を食べないし、一緒に用も足さない。食べたり“連れション”したりするのは「あなたを警戒していません」という意味がある。だからインテリジェンス(諜報)、ビジネスどちらの世界も会食を非常に重視する。親しくなってから会食するのではなく、先に会食することで信頼関係をつくってしまうのだ。キリスト教でいえば、パンとブドウ酒を皆で分け合う聖餐式も目的は同じだ。中東のケバブや米欧の野外バーべキューにも、肉を食う人間と煙を食う神様が「共食い」しているという宗教的な意味がある。キリスト教圏、ユダヤ教圏、イスラム教圏で人間関係をぐっと深めるには、ずばり野外バーベキューだ。

“連れション”が国同士の平和条約に結びついた例もある。1994年に締結されたヨルダン・イスラエル間の平和条約がそれだ。ヨルダンのフセイン国王(故人)とイスラエル情報機関モサドのエフライム・ハレビ副長官(当時)が、交渉がこう着状態に陥った際、ともにトイレに立ち、並んで横向きのまま会話して妥協案に合意した。“連れション”でお互いを仲間と認識し合ったことが成功に繋がったのだ。

また、最近お会いしたライブドア前社長、堀江貴文被告の例は示唆的だ。ある子会社社長が東京地検に持ち込んだ1通のメールが事件の発端、というのが堀江被告の弁。その社長は法廷で、裏切った理由を「メシにも誘ってくれなかったから」と証言したそうだ。

「メシぐらい言ってくれれば誘うに決まってますよ。倒産寸前の会社を買い取って、2000万~3000万円もの年収を与えていたから、感謝されているものとばかり思っていました」と堀江氏は言っていたが、食べ物の恨みは恐ろしいのである。