一例として、国際政治の世界では、約束をすぐに破ります。大国は自分に有利な国際法を利用しますが、不利なものは無効にし、ルールそのものを変えてしまう。国際間での約束破りが堂々と行われる中で、なぜ個人の関係性では約束を守る必要があるのでしょうか。このように、日常生活では考えないようにしていることを、分析哲学は掘り下げて考えます。物事を違った角度からみるため、新製品開発などに共通する視点があるのかもしれません。
息子は、成功することが大好きで、IT企業へ
翻って、日本において哲学は、厭世的なものだと決めつけられています。私の哲学塾に通う生徒のひとりが「カヌーをしていたときは妻の機嫌がよかったのに、哲学をすると機嫌が悪い」とこぼしていました。哲学をやりたいという人が相談に来るのですが、私は東大か京大へ行くようアドバイスしています。集まる仲間が優れているので、自分がダメでも将来出世した仲間が助けてくれるかもしれませんし、親も「有名大学なら仕方ない」と許してくれるでしょう。
いずれにせよ、もしあなたがビジネスマンとして成功したいのであれば、哲学には深入りしないことです。哲学は人を幸せにしないし、反社会的な場合もある。ビジネスに生かしたいのであれば、哲学の健全な部分だけを切り取って利用するのがいいと思います。私としては、面白みに欠けた方法だと思いますが。
ちなみに、私の息子は、私を反面教師にしたからか、俗っぽいことが大好きです。以前は日本の広告会社にいて、現在は米国のIT企業に勤めています。役に立たないことが大嫌いで、成功することが大好き。私と正反対の生き方をしています。
東京大学法学部卒業、同大学院哲学専攻修士課程修了。ウイーン大学で哲学博士号取得。電気通信大学教授を経て、「哲学塾カント」主宰。『英語コンプレックスの正体』など著書多数。