この3人のバリスタは、それぞれ所属会社が違う。イベントだから当たり前……と思うかもしれないが、長年コーヒー業界を取材してきた筆者の立場では別の感慨を持つ。技術を見せ合いながら、切磋琢磨することで、より進化したと感じるのだ。
昭和時代から、有志が情報交換を行う会はあった。たとえば「コーヒーマンクラブ」(CMC会)は1979年の発足で、富士コーヒーやシーシーエスコーヒー、キャラバンコーヒーなど、老舗や中小焙煎業の経営者・幹部が集まり交流する会だ。80年代からインドネシアやベトナムといったコーヒー生産地の視察も行ってきた。現在も活動は続いている。
世代交代でよりオープンに情報を共有
一方で、現在でも「○○グループ」として技術やノウハウを囲い込み、グループ以外の会員にはノウハウを見せない会社もある。だが、時代遅れ感も抱く。「クローズド」から、より「オープン」が目立つのは世代交代もあるように思う。今回紹介した鈴木氏は40代、岩瀬氏、本間氏、植松氏は30代だからだ。
実は、1人当たりのコーヒー消費量では、日本はそれほど多くない。ルクセンブルク、フィンランド、ノルウェー、スイス、デンマーク、オーストリアといった欧州各国の消費量は日本の倍以上だ。
量よりも「細やかな味」を楽しむのが日本の消費者(これは日本人に限らない)の特徴でもある。そんな舌の肥えた消費者に鍛えられて、コーヒーの世界がどうなっていくか。「まだワインほど、目玉の飛び出るものではない」とも聞くが、そういう人は「1杯7500円」のコーヒーを飲んでみたらいかがだろう。
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。