コーヒー専門店が苦しんでいる。円安によりコーヒー豆の値段が急騰し、経営を圧迫しているのだ。厳しい環境の中で、各店はどのような取り組みを行っているのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんがリポートする――。
「パナマゲイシャ」のコーヒー(11月10日のメディア発表会にて)
画像提供:サザコーヒー
「パナマゲイシャ」のコーヒー

赤字覚悟で最高級豆を「1杯500円」で提供するワケ

11月11日(土)と12日(日)、JR東京駅前の商業施設・KITTE(キッテ)にあるサザコーヒーで、「パナマ・ゲイシャまつり2023」というイベントが開催された。

茨城県に本店のある同社の鈴木太郎社長が、中米パナマで行われた「ベストオブパナマ2023」(国際コーヒー品評会)で優勝したパナマ産ゲイシャコーヒーを、オークションにて世界最高価格で落札。1キロあたり1万5ドル(日本円で約150万円相当)で手に入れた。落札総額は日本円で約3750万円になった(オークション後に外国の買い付け人と分けて約2000万円分を入手した)という。

イベントではその豆を焙煎し、3分の1のミニカップで1杯「500円」(税込み)で販売した。

ゲイシャとはコーヒーの品種で「花のような甘い香りと野生の甘い果物のような味がする、チョコレートのようなコーヒー」(太郎氏)だという。パナマ産ゲイシャは年々オークション価格が上がる中、「しあわせの共有をしたい」(同)と採算度外視で提供したのだ。

昨年もこのイベントを行った。最高級のコーヒー豆で注目度を高め、業界を活性化したい思いがある。寿司業界における初競りで、「毎年、青森県大間産の本マグロが超高値で落札されて新春のニュースになるが、マグロの過去最高価格が1㎏120万円で今回のコーヒーが同150万円だったので、コーヒー業界もあやかりたい」と太郎氏は話す。

サザコーヒーが落札した最高級コーヒー豆
筆者撮影
サザコーヒーが落札した最高級コーヒー豆

かつてない円安による打撃

気前のよい話から紹介したが、コーヒー専門店を取り巻く環境は厳しさを増している。

主な理由は急激な「円安」だ。2022年は32年ぶりとなる大幅な円安局面となり、米ドル/円は1ドル115円(2021年12月末)→151円(2022年10月21日)となった。その後は127円台まで円高に動いたが、再び円安局面となり、本稿執筆時は一時148円台(2023年12月1日時点)に。円安は、ほぼ全量を輸入に頼るコーヒー業界には死活問題となる。

コロナ禍で実店舗への客足が遠のいたが、ようやく回復してきた喫茶業界。それ以前からコーヒー豆のネット販売に注力していたサザコーヒーは、2020年~2022年もしぶとく黒字化を維持したが、現在、円安という新たな敵と向き合う。

「当社は1ドル137円で為替ヘッジをかけていますが、売り上げが伸びても利益幅が簡単に削られる状況です。その中でも、さまざまな販売施策を行っています」(太郎氏)

サザコーヒーが行うのが、たとえば人気の「将軍珈琲」を用いた派生商品の開発だ。今年の夏はこのコーヒー豆を用いたソフトクリーム「サザソフト 将軍」(税込み500円)を販売して売り上げを伸ばしている。

今年12月6日には、コンビニ最大手のセブン‐イレブンから、「将軍珈琲」を使用したコーヒーゼリー、コーヒーゼリーサンドが発売された。