政治ネタは、普遍的な視点で

日本人はあまり政治に関して話したり議論したがらないと言われるが、欧米人は、会社でコーヒーブレークのついでに、家族の団欒に、気軽に語り合うのが普通。積極的に話題にしたいネタである。相手と価値観が違った場合、険悪なムードになる懸念もあるが、「普遍的な視点で語れば問題ない」と井上さん。たとえば、北朝鮮のミサイル問題を「あれはおかしい」とつっこんでも、それは世論でもあるから聞いて怒る人はいない。最近のニュースをジョークにするとこんな具合だ。

東京タワーで、永田町方面を指しながらの“日本の政治ネタ”に沸く。

「『日本には自衛隊があるが戦えない。有事の際は米国の力を借りるしかない。だから日本の総理大臣はトランプ大統領とゴルフをして親睦を深める』。と、たんたんと説明して、最後に『我々の安全保障問題にゴルフはとても重要なんです』と力を込めると“オチ”になります」

私たちには聞きなれているゴルフ外交だが、よその国の人にとっては緊迫感のある安全保障問題で、娯楽的なゴルフの必然性を主張されるとは思っていないので「ほお!」と驚くのだという。

確実に笑いを取りたいときは、「自分たち」、つまり日本人を皮肉る手も。外国人は日本人に対して典型的なイメージを持っているので、ジョークにしやすいからだ。具体例を2つ披露してくれた。

「日本の女性は優しいと思われていて、外国人にもてます。そこを突いて『この国の女性はおしとやかだと言われますが、結婚すると違う生き物に豹変するから気をつけて』なんて言うと見事にウケます」

2つ目は、恰幅のいい欧米人たちと乗ったエレベーターでのひとコマ。

「定員40人のエレベーターなのに、18人でぎゅうぎゅう詰めだったんです。そこで、『定員は40人と書いてあるのに、18人できついですね。なんでかというと、ここは日本。forty people(40人)ではなく、forty Japanese(40人の日本人)という意味なんです』」

日本人は欧米人と比べてスリムだから40人乗れる、と説明したわけだ。

ところで、外国人がウケない話はあるのだろうか。聞いてみると「下ネタです」と即答が返ってきた。「欧米人はもともとその手の話にオープンだから、ユーモアにならない」のだとか。

ウケを狙うには、話し方も重要。せっかくいいネタを用意しておいても、噛みまくっては台無しである。力んで笑いを取りにいくより「軽く意表をつく、ぐらいの気楽な姿勢でいたほうが、いい結果が出ます」との助言ももらった。積極的にネタを披露していけば、外国人のツボにすっぽりはまるポイントが見えてくるはずだ。

(撮影=平松唯加子)
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