「南侵」が起きれば日本もただでは済まない
こうした惨事が起きれば、わが国も悠長に構えているわけにはいかない。韓国への救援阻止を目的とした北朝鮮工作員によるテロ攻撃、弾道ミサイルによる日本国内主要部への空爆、韓国軍残存部隊の退路を遮断しようと対馬攻略に乗り出す北朝鮮特殊部隊と自衛隊との戦闘、さらに日本海沿岸全域への難民漂着といった、さまざまな国難に次々と見舞われることが予想されるからだ。開戦の直前直後には、在韓邦人の救出も大きな課題となる。
テロや空爆で生じる日本人の死者は短期間で数千人に達する可能性があり、混乱から生じるパニックにも警戒が必要だ。こうしたことが局地的に起きるのであればともかく、日本全国で同時多発すれば、政府による対応はきわめて困難になる。残念ながら、現在のわが国では、法的にも能力的にも、政府に十全な対応力を期待できる状況にはない。
われわれ一般国民としては、巨大地震による震災被害と同様、2週間程度の混乱に耐える用意(食料や水や燃料の備蓄、情報収集手段の確保、救急救命知識など)を準備し、国に頼ることなく自分自身や家族の身を守る力を持つ覚悟が必要だろう。いまわが国は、短期的にみても非常に危険な状態に置かれていると、筆者は見る。
防衛ジャーナリスト
1967年生まれ。拓殖大学卒。雑誌編集者を経て、1995年より自衛隊を専門に追う防衛ジャーナリストとして活動。旧防衛庁のPR誌セキュリタリアンの専属ライターを務めたほか、多くの軍事誌や一般誌に記事を執筆。自衛隊をテーマにしたムック本制作にも携わる。部隊訓練など現場に密着した取材スタイルを好み、北は稚内から南は石垣島まで、これまでに訪れた自衛隊施設は200カ所を突破、海外の訓練にも足を伸ばす。著書に『自衛隊と戦争 変わる日本の防衛組織』(宝島社新書)『陸上自衛隊員になる本』(講談社)など。