米国の軍事力を東アジアに集中
この読売社説でも冒頭で使われているが、気になるのは「抑止力を高める必要がある」という文言である。
抑止力とは相手に攻撃をあきらめさせる軍事の装備力を指す。果たして防衛予算費を増額することで北朝鮮を思いとどませることができるのだろうか。
12月17日付の「プレジデントオンライン」でも「北朝鮮を先制攻撃できるミサイルは必要か」という見出しを付けて書いたが、北朝鮮が米国や国際社会の制裁に反発しながら核やミサイルの開発を続けるのを見ていると、この疑問が湧いてくる。
今年1年間の北朝鮮の暴走と米国などの動きを振り返ってみよう。
まず1月にトランプ氏が米大統領に就任する。すると北朝鮮は2月、中距離弾道弾ミサイルを発射、3月には弾道ミサイル4発を飛ばした。国連安全保障理事会が制裁決議を採択していくと、北朝鮮はそれに反発して大陸弾道弾ミサイル(ICBM)を次々と発射。9月3日には6回目の核実験まで行った。
11月上旬のトランプ氏の東アジア(日本や中国など)歴訪中は、米国は世界最大の戦闘能力を持つ空母など数隻を北朝鮮近海方面に向かわせるなど、米国の軍事力を東アジアに集中させる圧力をかけた。
その効果でミサイルの発射はなかった。抑止力が働いた結果だろう。ここまでは良かった。
もはや北朝鮮に抑止力は効かない
しかし11月20日、米国からテロ支援国家に再指定されると、今度は29日にはICBM「火星15」を飛ばした。このICBMは青森県沖に落下し、日本の国民を脅威にさらした。
米国の世界に誇る軍事力をもってしても、北朝鮮は核・ミサイル開発を中止しようとはしない。もはや米国の抑止力が役に立たないのだ。いまの北朝鮮に対し、抑止力は限界がある。
ならばどうすれば北朝鮮の暴走を食い止めることができるのか。北朝鮮を交渉のテーブルに着かせることができるのか。防衛費を増額して日本と米国のタッグの良さを北朝鮮に見せつけるだけでは駄目である。
沙鴎一歩にも最善の解決策は分からない。新聞各紙の社説も明確に答えていない。
ただ重要なのは国際社会や米国、それにアジアの国々とともに日本が最善策を探る努力を続けることである。