大規模・大量消費型イベントからの脱却
私が子どものころは、誰もが大晦日にはNHKの紅白歌合戦をラジオで聞いていました。なぜなら、当時、大スターが一堂に会して歌を披露するのは、大晦日の紅白歌合戦しかなかったからです。しかし、今はさまざまな「フェス」が開催されるし、好きなときにインターネットで好きな歌手の歌を楽しめます。
スポーツでも、似たような現象が起きています。ワールドカップなどの国際的なスポーツ大会は各地で開催されているし、各地のプロスポーツリーグには、世界中からトップ選手が集まってプレーしている。トップアスリートが一堂に会することの「珍しさ」は薄れてきています。
従来型の、大規模で大量消費型のイベントが、国が主導するかつての東京オリンピックだったとすれば、次の大会のあるべき姿は、分散型でボトムアップの参加による、持続可能な社会をテーマとしたオリンピックです。東京ではぜひ、原点に立ち返り、こうした「あるべき姿」を東京らしく実現する場としてほしいと思います。
三菱総合研究所理事長。1944年生まれ。67年東京大学工学部化学工学科卒業。72年同大学大学院工学系研究科博士課程修了。88年工学部教授、2000年工学部長などを経て、05年4月第28代総長に就任。09年4月から現職。専門は化学システム工学、CVD反応工学、地球環境工学など。サステナビリティ問題の世界的権威。10年8月にはサステナブルで希望ある未来社会を築くため、「プラチナ構想ネットワーク」を設立し会長に就任。