では、どうすれば話が長すぎないようにできるか。端的に言えば、まず話の要点を決め、そのポイントを伝えることに満足することを目指せばよい。
話を簡潔にするには漫才の構造が参考になる。漫才では「最近、物騒な世の中になりましたね」といった前振りで状況を提示し、次に「うちでも防犯対策したいんですよ」と自分が話したい話題に入っていくという定石となる構造がある。前振りがあって初めて聞き手は話を容易に理解できる。ところが唐突に「廊下を鴬張りに変えまして」と話し始めれば、聞き手が何の話かと混乱するのは避けられない。
一方、伝える技術の観点からすると、まず話が長すぎる人が陥りがちな罠を避けることも重要だ。それは「過去の話」「仮定の話」をしないということだ。
過去や仮定の話を始めると「5年前は、10年前は……」「もしこうだったら……」と際限なく広がりだしてしまう。「いま、ここで」に限定されなければ、話はどこまでも長くなる。
プロの落語家から伝える技術を学ぶのもよいだろう。たとえば話の邪魔になる要素をなくすことだ。「えーと、えーと……」を話し手が何度も繰り返すと、聞き手は「これで10回目、11回目……」とそちらが気になって話が頭に入ってこなくなる。こうした話の邪魔になる要素を適切に排除していくことは、一般の人でもできるだろう。
東京大学大学院教育学研究科・特任助教。東京理科大学大学院工学研究科博士後期課程。九州大学教育学部卒業、同大学院人間環境学府修士課程、博士後期課程修了。著書に『口下手な人は知らない話し方の極意 認知科学で「話術」を磨く』など。