「2025年頃にはAIが言葉を理解するようになる」

日本では経済産業省や文部科学省が旗振り役となってAIの大きなプロジェクトが進められていますが、残念ながら先に挙げた諸国に比べて出遅れているのが実情。AIの研究者の数では、日本人は世界の1%にも満たないともいわれており、そのうえ「優秀な頭脳にはそれに見合った高い報酬を支払う」という市場原理が日本では働かないことで、人材獲得でも後れをとっています。日本では一般のビジネスマンもITへの苦手意識が強く、IT・AI技術を使った新しいビジネスもなかなか生まれてきていません。

人とコンピュータをつなぐ技術は、運動障害がある人のツールとして開発が始まった。健常者が日常的に利用する日も近い。

最近のAIブームの火付け役になったのが、ディープ・ラーニングという機械学習技術と、それにより飛躍的に進化した画像認識能力です。一方でAIが不得手とするのが言語理解。いまのAIはまだ言葉の意味がよくわかっておらず、言葉を操るのは比較的苦手です。ただし、AI研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授は「2025年頃にはAIが言葉を理解するようになる」と予想しています。

AIにとって言語獲得に続く次の大きなブレークスルーになると見られるのが、特定の作業だけでなく、あらゆる思考を人間と同様に行うことができる「汎用AI」の実現です。汎用AIの研究開発をリードする全脳アーキテクチャ・イニシアティブは、「2030年頃に汎用AI開発のめどが立つだろう」と予測し、研究を進めています。

▼AI時代の人材に必要な学問は数学、哲学、計算機科学、経済学

私は「AIの時代になっても必要とされる人材になるためには、感性と悟性を磨くこと」といっています。悟性とは、言い換えれば「思考能力」。思考能力を鍛えるには、さまざまな思考パターンを頭にインプットしていくことがまず必要です。そうした思考のパターンを身につけるためによい学問分野として、数学、哲学、計算機科学(プログラミング)、経済学などが挙げられます。感性や悟性は実用的な勉強だけでは身につきません。欧米では社会のリーダーを育てるために、歴史や哲学などのリベラルアーツの教育を重視しています。